広島・ドラ2佐藤柳 プロ初登板初先発初勝利!6回2安打無失点「自分の投球ができた」 鬼門バンテリン3年ぶりカード勝ち越し
「中日1-2広島」(29日、バンテリンドーム)
広島のドラフト2位・佐藤柳之介投手(22)=富士大=がプロ初登板初先発で6回を2安打無失点に抑え、初勝利を挙げた。持ち味である伸びのある直球と変化球を低めに集め、中日打線に的を絞らせなかった。チームは3年ぶりにバンテリンドームでの3連戦でカード勝ち越しに成功。鬼門突破に導いた若き左腕が、新井鯉の勢いを加速させる。
先輩たちから「おめでとう」と声をかけられ、初々しく笑った。ウイニングボールを握り締めながら、歓喜のハイタッチを交わす。佐藤柳がプロ初登板初先発で初勝利。「いつも通りの投球をしようと思ってマウンドに上がりました。すごくうれしいです」と初めてのヒーローインタビューでも顔をほころばせた。
初回から丁寧に攻めた。「緊張はしていた」と振り返るも、三者凡退で立ち上がる。その後も、右手を高々と上げる独特のフォームから繰り出す伸びのある直球を軸に、打たせて取る投球を披露。「ストライク先行でいけた。自分の投球ができた」と6回を2安打2奪三振無失点の好投で自身の役目を全うした。
打席でも見せ場をつくった。三回1死で迎えたプロ初打席で松葉の変化球を右前へ運び、プロ初安打を記録。背番号28の先輩である床田から譲り受けたバットで放った一打に「床田さんのおかげで打てました」と感謝し、「(広島に)帰ったら報告したいです」と再会を待ち望んだ。
宮城県の海岸沿いにある七ヶ浜町生まれ。野球好きな父・友和さん(51)の影響で物心ついた頃から常にボールが身近にあった。「低学年でボール拾いばかりして、野球を嫌いになってほしくない」という両親の思いから、小学1年からは打撃系総合武道の「空道」で礼儀などを学び、小学3年で本格的に野球の道へ。母・百合子さん(46)は「投げることが本当に大好きだった。私から『バッティングも練習しようね』と声をかけたくらい」と笑う。
そうして歩み始めた野球人生だったが、決して順風満帆ではなかった。東陵高への入学直前には自転車で転倒し、左手首を骨折。富士大時代には左肩を痛めて約1年間、公式戦のマウンドを離れる苦しい時期も経験した。そんな逆境の中、心の支えとなっていたのは父から言われ続けていた「野球を楽しめ」という言葉だった。プロ入り後も開幕は2軍スタート。それでも「自分の野球人生はうまくいっていない時の方が多かった。やるべきことをやれば結果はついてくる」と腐らず自分自身と向き合い続けた。
チームはバンテリンドームでの3連戦で22年9月以来、3年ぶりとなるカード勝ち越しに成功し、ようやく鬼門突破を果たした。「2勝、3勝とできるよう、任せられたら試合をつくりたい」と佐藤柳。みちのくのルーキー左腕が鯉の未来を担っていく。
◆広島、新人初登板初勝利 プロ初登板初先発の佐藤柳が6回無失点の好投で初勝利。広島の新人投手の初登板初勝利は、2024年10月5日のヤクルト戦(マツダ)で二回から4イニングを投げて1失点に抑えた滝田一希以来で15人目(1950年以降)。また、初登板初先発では、同年9月15日・DeNA戦(マツダ)の常広羽也斗以来となる。なお、左腕では52年3月の大田垣(のち備前)喜夫、06年10月の斉藤悠葵以来、19年ぶり3人目となる。
◆佐藤柳之介(さとう・りゅうのすけ)2002年11月1日生まれ、22歳。宮城県出身。179センチ、87キロ。左投げ左打ち。投手。東陵高、富士大を経て、24年度ドラフト2位で広島入団。今季ウエスタンでは10試合で2勝1敗、防御率2・95。回転数が多くキレのよい直球が魅力。変化球も多彩。





