広島・鈴木 打者5人完璧 新庄マインド“ゾーン”で勝負 サブマリン初シートで「いいもの出せた」
「広島春季キャンプ」(6日、日南)
日本ハムから現役ドラフトで広島に加入した鈴木健矢投手(27)が6日、今キャンプ初めてシート打撃に登板して打者5人を完璧に抑えた。カウント不利な状況でも四球を出さず粘った右腕は、日本ハム・新庄監督の「四球を出すなら本塁打の方がいい」という教えを体現。緩急自在の投球に他球団のスコアラーは警戒を強め、新井監督も高評価を与えた。
18・44メートルの空間をまるで自分の世界のように支配した。速球はなくても投球術で翻弄(ほんろう)するのが鈴木の味。この日登板した6投手の中で唯一の無安打投球を披露し「結果的にすごくいいものが出せた」と笑顔で振り返った。
地面スレスレから放たれる白球に、スタンド中の視線が注がれた。カーブ、スライダー、シンカーを自在にちりばめて若鯉を手玉に取っていく。そして、中村奨との対戦で見せ場が訪れた。
カウント3-1から高め直球で空振り。フルカウントに持ち込み、最後は外角スライダーで空振り三振に斬った。「スライダーと真っすぐで空振りが取れた」と手応えを口にした中、際立ったのは簡単に四球を与えない粘り腰。そこには昨季まで在籍した日本ハム・新庄監督の教えがあった。
就任以来、四球がチームに与える悪影響を力説してきた同監督は「四球を出すなら本塁打の方がいい」という考えを投手陣にたたき込んできた。鈴木もその一人。「何年もそういう考えでやってきた。カウントが悪くても、僕の投げ方なら少しでもアドバンテージがあると思う。ビビらず、しっかりゾーンに投げるのは心がけている」と新天地でも“新庄マインド”を体現してみせた。
他球団007にもインパクトを与えた。阪神・千原スコアラーは「(右打者は)制球良く投げられたら、なかなか打てない」と印象を語る。一般的に下手投げ投手は投球の軌道が見やすいため、左打者に不利とされている。だが中日・金子スコアラーは「左にも抑え方を持っている貴重なタイプ。カープにはパワータイプの投手が多いので、こちらとすると厄介な投手」と警戒心を強めた。
新井監督は元ロッテ・渡辺俊介氏に姿を重ねて「奥行きをすごく使える投手なので(渡辺)俊介みたいな感じ。ウチにはいないタイプで、すごく面白い」と絶賛する。起用法は先発、中継ぎの両にらみで「これから考えていきたい」と見据えた。
昨季は8試合の登板に終わったが、23年には6勝を記録した。新たな場所でのフル回転に向け「まだまだレベルアップできると思う。技術面をもっと高めて頑張っていきたい」と鈴木。希少なサブマリンが、投手陣に厚みをもたらしていく。(向 亮祐)
◆鈴木健矢過去の対セ・リーグ 交流戦で11試合に登板し2勝1敗、防御率4.01。勝敗がついた3試合は先発、他の8試合はリリーフ登板。広島戦で唯一の黒星を喫するなど打ち込まれたが、他の5球団相手では防御率2.55、阪神と巨人から勝利など結果を残している。