「都市対抗野球・東邦ガス２－１日立製作所」（４日、東京ドーム）

　広島のドラフト５位・松本竜也投手（２２）＝ホンダ鈴鹿＝が、都市対抗で強烈なアピールに成功した。東邦ガス（名古屋市）の補強選手として挑んだ日立製作所（日立市）との対戦で、タイブレーク制の延長十回１死満塁から登板し、２者連続三振でサヨナラ勝ちを呼び込んだ。無失点だった１回戦の登板をテレビ観戦していた佐々岡監督は、リリーフの適性に太鼓判を押しており、新人右腕がセットアッパー争いに殴り込みをかける。

　剛腕の証明だった。松本がオール直球勝負を挑み、力で日立製作所をねじ伏せた。雄叫びを上げ、何度も右拳を握る。任された大一番で、見事な２者連続三振。“松本の１０球”がサヨナラ勝利を呼び込んだ。

　１－１で迎えた延長十回。タイブレーク制の１死満塁で、出番が巡ってきた。先頭の３番打者に対し、初球から武器の剛球を連投。最後は１４６キロの直球で空振り三振だ。

　４番を迎えても、強気の投球を貫いた。１ボール２ストライクから、内角膝元にズバッと一直線。見逃し三振に仕留め、最高の結果をもたらした。

　東邦ガス・山田監督は「三振がほしい場面。タイブレークは松本でいくと決めていた」と起用理由を説明。続けて「（自分の武器を）前面に押し出した投球だった」と８強進出に導く快投を、手放しで褒めたたえた。

　１回戦の三菱重工Ｅａｓｔ（横浜市）戦では、六回途中から登板して３回１／３を無失点。その投球をテレビ観戦した佐々岡監督は「度胸がある。リリーフタイプで、そういう使われ方もしている。競った場面で良いものを見せてくれているし、楽しみ」と評価。空振りを奪える直球に、ピンチで動じないハートの強さ。リリーフの適性を見いだしている。

　守護神・栗林へつなぐ「勝利の方程式」の再構築が、来季の巻き返しには欠かせない。指揮官は「勝ちパターンの八回というのは、この２年固定ができなかった。ヤクルトは固定して（セットアッパーの清水が）７０試合投げた。固定するとやっぱり安定する。みんな意識を持ってやってもらえたら」と、バチバチのチーム内競争を求めた。

　ケムナ、塹江、島内、コルニエル、森浦ら若手が八回の男を狙う。中崎や一岡の３連覇を知る右腕も、虎視眈々（たんたん）と準備を整える。そこに松本が新たな風を吹き込むことができれば、競争のレベルはさらに上がり、チームのレベルアップにつながる。

　横一戦からの戦い。自らの手で勝ち取れ－。指揮官が求める強さとたくましさ。松本も１年目から競争に入り込む資格は十分だ。