北別府学氏が回想 ファンの存在は絶大だが甲子園では常に追い詰められていた

 新型コロナウイルスの感染拡大に配慮し、今年のプロ野球キャンプは無観客で行われている。異例の状況は続くが、広島OBでデイリースポーツウェブ評論家の北別府学氏は、あらためてファンに対する感謝の気持ちを言葉にした。

 ◇ ◇

 ファンあってのプロスポーツであることは言うまでもないことだけど、コロナの影響とはいえ、本当にもどかしい毎日が続くね。キャンプ地を取材に行くと、大勢のファンの方が見学に来て、近くの飲食店もファンや報道陣で賑わっていたものです。キャンプのあとはオープン戦、そして公式戦に入っていく。選手たちには早く、あの熱い声援を送ってくれる満員の観衆のもとで、試合をさせてあげたい。心からそう思うね。

 現役のころを振り返ると、勝つこと、いい投球をすることに必死で、正直なところファンサービスをする余裕が無かった。優勝する。タイトルを取る。それがプロ意識だと思っていたところはあるね。勝ちさえすればそれで良いんだという考えさえあった。だからグラウンドの中では試合中に相手選手と言葉を交わすことは、ほとんどなかった。

 そういう意味では最近は随分と変わってきたね。出塁すると、ベース上で挨拶めいたことをして、何か会話をしている様子が目につく。悪いことだとは言わないけど、挨拶は試合前に終えて、試合が始まったら相手は敵と思い対峙する。ニヤけて話をしているシーンには違和感を感じるね。

 私が現役のころは、捕手が打者に対して、「気をつけよ、今日はボールが抜けとるからな」と言って神経戦をしかけてみたり、グラウンドは戦場のようだった。ファンへのサービスのつもりでスタンドに向かって手を振った選手が、先輩から「何ニヤニヤしとるんじゃ!」と怒られたり。とにかくゲームが終わるまで両チームともピリピリしていたように思う。

 それにしても球場の雰囲気や施設の充実ぶりは、本当に素晴らしくなった。ファンの気質も変わってきているのかな。昔は厳しいヤジがよく飛んで来たものですよ。それがマウンド上でよく聞こえる。投げるたびに同じ場所でヤジってくる年配の方がいて顔まで覚えましたよ。しかし、そのヤジもどこか愛情がある。

 広島県民、カープの選手をワシが育てるんじゃ、みたいなところがある(笑)。それにナイターの試合になると、女性や子どもたちは少なかった。おじさんばかり(笑い)。今は違うものね。スタンドは華やかだし、ピンチになれば温かい声援を送ってくれる。これも時代の流れだろうね。ありがたいことです。

 しかし、このありがたいファンの存在が、逆の立場になると、ものすごい強敵になる。ビジターでは、特に甲子園球場などその典型で、慣れないうちは、自分のピッチングができない、追い詰められた心理状態で投げるような感覚になる。それほどにファンの力は絶大なんです。

 昨シーズンは無観客試合や人数に制限を加えた状況で試合を行っていた。その中で新人だった森下は2桁勝利を挙げて新人王に輝いた。今年、どうだろうか。仮に制限が取り払われ、満員の観衆の中での試合となったら、さすがの強心臓の彼も大きなプレッシャーを感じるはず。それを乗り越え勝っていく姿を見るのも、楽しみ方のひとつかもしれない。

 とにかく一刻も早く平常に戻り、球場が満員のファンで再び真っ赤に染まる日が来ることを願ってやみません。

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