【惜別メッセージ】新井から黒田へ感謝の言葉「あの時、背中を押してもらえなければ…」

 広島・新井貴浩内野手(39)が、引退する黒田への惜別メッセージを寄せた。低迷期を投打の柱として支え、ともに一度はチームを離れ、戻ってきた2人。今季、広島の街に歓喜をもたらした盟友への、感謝の思いと第二の人生へのエールをつづった。

  ◇  ◇

 もう一度、一緒に野球がやりたかった。

 引退する、と最初に聞いたのはいつかと聞かれたら、正確に答えるのは正直、難しい。優勝の前から、もっと言えば昨年から、引き際についての話はちょくちょくしていた。寂しい思いはある。来る時が来たか、という思いもあった。いろんなことがあったし、いろんな思い出がある。

 言葉ではなくても、分かっていた。昨年から体が言うことをきかないのかな、と。いろんな箇所に注射を打ちながら、必死に投げようとする姿を見てきた。今年はその度合いが、昨年より増していた。注射の本数も増えているし、ケアする姿を見ても、だ。昨年よりさらに体の状態がよくないんだな、というのも感じていた。引退すると聞いた時は正直、「やっぱりか…」という思いはあった。でも、僕としてはまだ一緒に野球がやりたかった。

 「まだ来年、一緒に野球をやってください」

 厳しいと分かっていても、言葉が自然と出てきた。出会ってから18年。思い出を振り返ればキリがない。それほどたくさんあるが、近々では自分が広島に戻るか、どうかで悩んだ2年前のオフだ。頻繁に電話で相談していた。「帰れるわけがない」。諦めていた僕に、「お前には伝えられるものがある。気にせず帰ってくればいいんだよ」と。いつも背中を押してもらったのは、黒田さんの言葉だった。

 あの時、背中を押してもらえなければ、カープに戻っていなかったかもしれない。「自分は戻りたくても、戻ってはいけない人間」。そう思っていたから。存在はどこまでも大きい。黒田さんも一緒に戻ってきてくれた。復帰2年目でリーグ優勝まで経験させてもらうことができたから。

 25年ぶりにチームを優勝させて、まだやれるのに潔くユニホームを脱ぐ。本当にカッコイイ。僕もカープファンだったから。その目線で見て寂しい思いはあるが、カッコイイという思いの方が強い。引き際の美学というか、らしいな、と。今年の優勝は僕のおかげだと言ってくれる。純粋にうれしい。けど、それは僕じゃない。やっぱり黒田さんの存在感で優勝できたと思う。

 数字的なものもそうだ。だが、それ以上にチームに与えた影響というのは計り知れない。野球に対する姿勢や取り組み方、試合に入る覚悟。投手だけじゃなく、野手に与える影響も一番だった。一緒にプレーできた若い後輩たちがこの経験、教えを、絶対に忘れてはいけない。これからカープに入ってくる選手に、必ず伝えていかないといけない。黒田さんがいなくなっても思いをつないでいく。自分も含めて、みんなの使命だと思っている。

 引退の意思は固かったが、発表のタイミングを迷っていた。「シリーズが全部終わってから」と言う。誰にでも気遣いを忘れない人。チームにもそうだが、相手にも迷惑が掛かるんじゃないか、と。とにかく迷惑を掛けたくないと。そういう人だ。でも、僕は先に伝えてもらいたかった。自分たち後輩選手も、ファンの人たちも見方が違ってくる。決して忘れてはいけない。

 これで最後なんだ、もう見られないんだと。目に、心に焼き付ける、その思いが変わってくる。それは僕がファン目線で見てもそうだ。「自分でもどうしていいか分からん」と悩ませてしまったが。過剰なくらい気にする、気を使う部分がある人。でも、最後は僕のお願いを聞き入れてくれた。何度か話をした結論だったが、僕はこれでよかったと思う。

 日本シリーズ開幕前に引退を発表したことでチームはまとまって、ぎゅっと引き締まった。第7戦まで持ち込んで最後にもう1試合、一緒にやりたかったけど…。札幌ドームでの投球は目に焼き付いているし、心にも焼き付けている。あの姿は一生、忘れることはない。

 まずはしっかり体を休めてもらって。何年後になるか分からないが、また、指導者としてカープに戻ってきてほしい。言葉にできない寂しさはある。ただもう一度、一緒に野球をすることもできた。本当に戻ってきてくれて、ありがとうございました。優勝させてもらって、ありがとうございました。お疲れさまでした。(広島東洋カープ内野手)

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