【松田オーナーインタビュー】25年といったら罪は重い「ようやっと恩返し」

 広島・松田元オーナー(65)がデイリースポーツの単独インタビューに応じ、低迷期の苦悩、支えてくれた地域やファンへの感謝、チームに寄せる思いを語った。先代オーナーの父・耕平氏が1975年の初優勝時に残した「ようやっと恩返し」という言葉を引用し、25年ぶりリーグ優勝の心境を明かした。

  ◇  ◇

 -25年ぶりのリーグ優勝。25年はやはり長かったか。

 「そりゃ長いよ。むちゃくちゃ長いよ。うちに新入社員で25歳の子がいる。その子が生まれた年が最後の優勝で。それが25歳。悲しくなるよね、こんなに大きくなるまで(笑)」

 -球団取締役、オーナー代行として1984、86、91年の優勝を経験しているが、オーナーとして初優勝。

 「あの当時は、いつでもできると言ったらおかしいけど、チャンスがあったらポンと獲れる、いつも優勝圏内という感覚。それが下に落ちて、ずっと低迷しだして、いったん落ちたら、なかなか元に戻らないと痛切に分かったね。(96年の)三村さんの時に優勝できていたら、また違っとったかもしれないね。三村さんに監督としての勲章を手にしてもらいたかったから、非常に申し訳なく思っている。あの人をあそこで優勝させてあげることができていたら、あの人の野球人生ももっとより良きものになっていたかなと、後悔の部分はあるね」

 -オーナー自身、プレッシャーもあったのでは。

 「そりゃあったよ。みんなにボロカス言われたし、ケチだ、なんだと言われ続けて。ケチではあるけど(笑)。でも本当に大変だった、マツダスタジアムができるまでは」

 -02年にオーナー就任。2年後には球界再編問題があった。

 「あれは大変だった。1リーグ10球団という話も出たけど、あの当時はまだ放映料が高かった。10球団になると、巨人戦の(放映)金額、本数が下がる。どれぐらい影響が出てくるとか試算をしたけど、あの頃に比べると、今は半分以下。10球団になったら(球界全体が)先細りになって、うちが一番最初に犠牲になっただろうね」

 -新球場の建設が大きかった。

 「これも大変だった。新球場はありがたいけど、自分の理想の球場を理解してもらうのに、ものすごく時間がかかった。わしが一番、拒絶感を持ったのがドーム。ドームだけは絶対にダメじゃと。でもなかなか理解してもらえんかったね」

 (続けて)

 「コンコース(幅)12メートルを『なんでそんなに広いのか』って言われたけど、12メートルというのは広島の本通りの広さ。ちゃんと測りにいかせてね。土曜日、日曜日とか年末になると、あそこの本通りはものすごく混むんよ、わしらが子どもの頃は。球場には3万人いるんだから、そこを通るにはどうしてもそれぐらいのスペースがいるんだということで通した。今でもまだ狭いぐらいよ。球場ができて初めて、『意味が分かった』という人が結構多かったね」

 -地域に根ざした球団というものがオーナーの根底にある。

 「地域の支えがないと。みんな市民球団って言うけど、わしは地域球団って言う。地域というものを先に持ってくる」

 -昨年黒田、新井が復帰。これが今年の優勝につながっている。

 「ものすごくつながっている。黒田、新井。あと1人、小窪。これが表のリーダーというか、3つの重しというか。どっしりとした人間力を持っている3人がいて、丸と菊池がすごく楽になったと思う」

 -復帰後の活躍ぶりは言うまでもない。

 「黒田はやると思ってたけど、新井はね。覚悟を持って帰ってきて、1年目もそうだし、2年目で開花しているような感じやな。うれしそうに野球をしとるじゃない、阪神時代よりも(笑)。わしらも見ていてうれしいよ」

 -緒方監督に昨季からの変化を感じる部分はあるか。

 「18歳の頃から知ってるからね。本人が持ってる生真面目さとかも分かってる。九州人としての誇りとか、人一倍持っている。そういうものをなかなか捨てんから。その半面、気の弱いところもあるわけよ、恥ずかしがり屋で。1年目からだいぶん変わったと思う。持ってる本質を出せば、もっと親しみを感じると思うけどね」

 -今季開幕前の下馬評は高くなかった。

 「それはしょうがないと思ってた。15勝のマエケンが抜けてね。開幕前にカギを握るのは、野村だと言ったはず。野村が活躍して、もう一つは中継ぎの勝ち星が増えるはずだと。優勝するまで自信はなかったけど、いい形にはなると思ってた」

 -先代の耕平オーナーにこの優勝をどう伝えるか。

 「父親が75年に優勝したときに言った言葉は、『ようやっと恩返しができます』。(球団設立から)26年間ずっとできなくて、恩返しができましたと。わしもおんなじことよ。地域にずっとお世話になって、存続させてもらって、25年間優勝できなかった。この球場を造ってもらって、社会への還元もいろいろやりよるけど、パズルで言えば最後のピースが優勝。球場で楽しみを提供することはできるけど、勝つということ、優勝するということは全然できていなかった。今回、恩返しがようやっとできたということ」

 -改めて今回の優勝はオーナーにとってどんなものか。

 「歓喜というより、しみじみという感じ。やった、やったったで、という気持ちは全くない。25年の間に、もう亡くなったけどわしの弟も優勝を見ていない。家族の中でもそういう人がいるんだから、地域の中でどれくらい『もう一回優勝が見たい』とか、『優勝を見ることができずに…』という人がいるか。25年といったら罪は重い。だからこの優勝は重たい。やっと恩返しが少しだけでもできたという思いがあるから、大喜びという感じじゃない。みんな分からんだろうけど」

 -最後に今後の夢、ビジョンを。

 「マツダスタジアムが地域の中で、地域の人に愛されて、地域の人に楽しんでもらえる、地域の人が交流できる場所になればええなと思う。マツダスタジアムに来て、コンコースをグルグル回れば誰かに会う、というような場所になればね。60何歳になって、夢見ろというのは無理(笑)。でも新しいものはいつもやりたい。いつまでも、新しいものにチャレンジする気持ちは持っていたいね」

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