さよなら9人制野球【名場面特集】自らの延長サヨナラ弾でノーノー勝利の阪神左腕エース 想像超える「9人目の野手」 セ来季からDH制

 セ・リーグの9人制野球が今季限りで幕を下ろし、来季からはDH制が導入される。セでは今季の試合開始前に「9人制野球 最終章」というタイトルを掲げた映像を球場内のビジョンで流してファンの郷愁を誘ってきた。延長十一回に自らサヨナラHRを放ちノーヒットノーランを達成した伝説の左腕、1試合3本塁打を放った強者(つわもの)もいた。投手が打席に立つことでさまざまなドラマが生まれた。球史に刻まれた9人制野球の名場面をデイリースポーツ紙上でお届けする。(構成・若林みどり)

  ◇  ◇

 【阪神・江夏豊自らのサヨナラ弾で決めた!!延長11回ノーヒットノーラン】

 打席に立った投手が時折見せる、野手顔負けの打撃や想像を超えるプレーにファンは魅了されてきた。

 1973年8月30日の甲子園球場での中日戦は劇的過ぎる幕切れとなった。江夏と中日・松本幸行の両左腕による緊迫の投手戦は0-0のまま延長戦に突入。中日打線を無安打に抑えたまま十一回、142球を投げた江夏は、その裏の攻撃で打席に立ち一振りで決着をつけた。松本の初球ストレートを捉え右翼ラッキーゾーンへサヨナラ弾を運んだ。

 延長でのノーノー達成はプロ野球史上初。2日前には救援で3回65球を投げており、中1日での登板。その打棒はもちろん、強靱(きょうじん)な体力、精神力に驚嘆するしかない。

 快挙を報じたデイリースポーツ紙上には「一生かかってもこんな感激はないやろな」とのコメントが残されている。

 【巨人・堀内恒夫1試合3発&ノーヒットノーラン 引退登板でもHR】

 本職の野手でも難しい3打席連続ホームランという離れ業を軽々とやってのけ、ノーノーまで達成してしまったのは堀内だ。プロ2年目の1967年10月10日の広島戦(後楽園)。第1打席でホームランを放つと、第2、第3打席と3連発。投手としては史上初の快挙だった。投げては無安打投球を成し遂げた。73年の南海との日本シリーズ第3戦では投手として初の1試合2本塁打も記録。類いまれな打撃センスの持ち主だった。引退登板となった83年10月22日の大洋戦ではプロ通算21号のホームランで自身の花道を飾った。

 【国鉄、巨人・金田正一投手 歴代最多本塁打36本】

 投手として歴代最多の36本塁打はいまも燦然(さんぜん)と輝く。400勝投手の金田正一。17歳2カ月で野手を含め最年少でプロ1号を刻み、サヨナラ本塁打も2本記録。代打での2本塁打を加えると通算38本塁打。突出した実力の持ち主だった。

 【巨人・桑田真澄代打でバスター、勝利に貢献】

 02年6月19日の横浜戦(横浜スタジアム)、延長十一回無死一塁。原辰徳監督に「代打」として送り出されると、バントの構えからヒッティングに切り替えるバスターを三遊間に見事に決めて勝利に貢献した。フィールディング技術にも定評がある173勝右腕は、投げてよし、守ってよし、打ってよしの三拍子そろった野球センスの塊でもある。

 【阪神・ムーア、巨人ガルベス助っ人打撃センスきらり】

 阪神にも打撃センスが光った助っ人がいた。トレイ・ムーア。02、03年に在籍し、10勝ずつをマークしたが、2年間で31安打、11打点を挙げ通算打率・295。03年4月12日・巨人戦の三回には、13人攻撃の口火を切るヒットに、右翼フェンス直撃の2点二塁打と1イニング2安打も記録した。

 さらに5月17日の巨人戦では8回を0封し、自らV打も放ち、スコア1-0の投打のヒーローに。この年の前半戦終了時の打率は・371。オールスターのファン投票では投手部門では9位ながら、一塁手部門で43万票余りを集めて3位となり話題を呼んだ。

 「カリブの怪人」の異名を取ったバルビーノ・ガルベスは打撃でも驚異のパワーを見せつけた。在籍1年目の96年に16勝を挙げ優勝に貢献したが、99年には投手史上初のシーズン2度の満塁弾を放っている。1度目は5月21日の阪神戦で吉田豊から甲子園の左翼席へ。2度目は8月13日、横浜スタジアムの場外へ満塁弾を運んだ。在籍5年で通算10本塁打。野手顔負けだ。

 【ヤクルト・石川雅規 プロ野球最長タイ24年連続安打】

 今季限りでの引退を決めた石川も「9人目の野手」として活躍してきた1人だ。昨年8月7日の巨人戦で田中将から中前打を放ち、三浦大輔(DeNA)がプロ2年目から記録した24年連続安打に並んだ。(石川はプロ1年目からの記録としては最長)25年目の今季は記録を伸ばせなかったが、通算136安打、通算150犠打をコツコツと積み上げた。

 【腕の見せどころ、ダブルスイッチ】

 監督にとっても9人制野球は投手交代のタイミングや代打起用の面において腕の見せどころという側面があった。投手交代時に野手も同時に交代させて、投手の打席を遅らせる「ダブルスイッチ」は重要な戦術だった。

 阪神、オリックスの監督を務めた岡田彰布氏はDH制導入が議論されていた当時に反対を主張。その理由を「監督が楽すぎる。打順をシャッフルしたり、投手が打席に回って来るとか来ないとか、そういう醍醐味(だいごみ)がない」と明かしている。

 投手が当たり前に打席に立つ光景、セ・リーグならではの采配の妙は今季限りで見納めとなったが、9人制野球で生まれた数々の名場面はファンの記憶に残っていくに違いない。

編集者のオススメ記事

野球最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(野球)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス