広経大が5季ぶりV 東監督、亡き父はカープ応援歌も歌った東為五郎さん「一番喜んでくれたんじゃないかな」
「広島六大学野球、広経大8-0近大工(8回コールド)」(11日、近大工野球場)
広経大が宿敵の近大工を破り、10戦全勝の勝ち点5で5季ぶり31度目の優勝を決めた。就任3年目の東賢孝監督にとって、1年目の春以来となる2度目のリーグ制覇で、秋は初優勝。7月末に亡くなった父で、広島の歌手、タレントとして活躍したこともあった東為五郎さん(本名・東孝成さん)にささげる歓喜のVとなった。
宿敵の壁をようやく打ち破った。24年秋から4季連続で近大工に敗れていた。東監督は「本当に選手たちがよくやってくれました。それだけですね」と教え子たちをねぎらった。相手の4年生投手に、最後まで負けたままで終わりたくないという思いも強かった。「選手たちがその期待に応えてくれた」と喜びをかみしめた。
今春は投手陣に故障者が相次ぎ、近大工との大一番では苦杯をなめた。主力投手2人が最終週に故障し、初登板の投手を起用せざるを得ない苦しい台所事情だった。それでも選手たちは悔しさを糧に成長。「春から秋にかけて本当に成長を感じた。頼もしくなった」と目を細めた。
チームを変えたのは渡邊颯人主将(3年・おかやま山陽)の存在だった。春のリーグ戦終了後に主将を引き継ぎ、チームをまとめてきた。
「渡邊がキャプテンになって、チームの雰囲気がガラッと変わった。言うべきことをはっきり言うタイプで、チームに締まりが出た」
この試合も5番DHで出場した前主将の川竹巧真(4年・高知)とともにチームを引っ張った。
渡邊は前日、遊撃の守備でピンチを救うファインプレーを披露。この日は2点リードの七回に貴重な加点打を放ち、八回にはコールド勝ちを決める左翼ポールに直撃する満塁本塁打を放った。優勝を決める2試合で攻守に存在感を示した。
東監督が目指してきたのは、投手力と堅守を軸に少ない好機を生かす野球だ。
「昨日も今日も守備に救われた。目指してきた野球ができた」
初回の1死一塁では、中野尋仁二塁手(2年・呉)が後方のフライを好捕。四回の2死二塁では花本航志中堅手が右中間を抜けるような打球をダイビングして好捕した。
出場機会に恵まれない選手も含め、チームの勝利を優先した姿にも成長を感じた。「この2試合はチームが勝つためにという一体感がすごくあった」と、就任から3年、積み重ねてきた野球が実を結んだ。
そして、今回の優勝には特別な思いもあった。7月に亡くなった父・為五郎さんの存在だ。為五郎さんは1970~80年代に広島で歌手やタレントとして活躍。内装工事業を営む一方、テレビやラジオにも出演した。大の野球好きで、カープ第1次黄金期を率いた古葉竹識監督や選手たちとも親交が深かった。
カープにまつわる楽曲も数多く歌った。江夏豊が作詞した「さすらい星」を発売したほか、「為五郎と赤ヘル青春仲間」として発表した「今が青春パート2」には高橋慶彦、川口和久らカープの選手も参加。地元広島で親しまれた。
昨年、脳梗塞で倒れ、懸命なリハビリを続けていたという。7月初めにようやく退院したものの、その後、急逝した。野球が大好きだった父は、息子が率いる広経大の戦いぶりも気にかけていた。「親父はずっと勝てないことを心配してくれていた。『お前、大丈夫か』って、いつも言っていましたね」と、なかなか勝てない時期も、息子を案じ続けていた。
それだけに今回の優勝を「一番喜んでくれたんじゃないかな。ちょっと見せてあげたかったという気持ちはありますけど」と、亡き父への思いを口にした。
就任1年目の春に優勝してから、なかなか頂点に立てなかった。「私自身も悔しい思いをしてきた。少し報われたというか、本当に選手たちのおかげです」と、苦難を乗り越え、教え子たちへの感謝を繰り返した。
次なる目標は全国の舞台だ。広経大は31日、11月1日に香川県のレグザムボールパーク丸亀で開催される明治神宮野球大会の中四国代表決定戦に出場する。
「もちろん、ここで終わるつもりはありません。広島六大学の代表として、全国を目指して頑張りたい」
選手たちとともにつかんだ5季ぶりの優勝。天国で見守る父に、今度は全国の舞台で戦う姿を届ける。
