漫画家・平松伸二さんが故郷に“恩返し”元プロ野球選手3人を描いたポスター初披露「続けていれば、いいことがある」野球少年少女にエール
「ドーベルマン刑事」「ブラック・エンジェルズ」などで知られる漫画家・平松伸二さんが27日、岡山県高梁市の高梁グリーンパークで開催された「2026松原ふれあい祭」のトークショーに出演。自身が描き下ろした野球教室「高梁ドリームベースボールアカデミー」の告知ポスターを初披露した。
野球教室は2027年3月7日、高梁市の平松政次球場で開催される。高梁市出身で東京都在住の上野智司さんが発起人となり、故郷の子どもたちに夢を与えたいとの思いから企画。講師には、日本ハム、西武で活躍した西崎幸広さん、日本ハム一筋の田中幸雄さんそして南海(現ソフトバンク)、広島、巨人に在籍した西山秀二さんを招く予定だ。
公開されたポスターには、高梁市を象徴する臥牛山と備中松山城をバックに平松さんの野球漫画「キララ」の主人公・生沢輝良々とともに西崎さん、田中さん、西山さんの3人が現役時代のユニホーム姿で躍動する様子が描かれ、「高梁市の子どもたちに一生の思い出と夢を!!」という言葉が入っている。
平松さんは3人を描く際に意識したことについて、「似顔絵なので、まずは顔を似せること。皆さんの動きが伝わる写真がいろいろあったので、その中から躍動感のあるものを選んで描きました」と説明した。
野球教室の会場となる球場に名前を残す平松政次さんは、高梁市出身のプロ野球OB。岡山東商、日本石油を経て大洋(現DeNA)に入団し、「カミソリシュート」を武器に通算201勝を挙げた。1970年には25勝をマークし、沢村賞を受賞。野球殿堂入りも果たしている。
故郷にゆかりの深い平松政次さんの名前を冠した球場で野球教室を企画した上野さんからポスター制作の依頼を受け、「僕にできることは絵を描くことですから。もちろん引き受けますよ、と言った」と笑顔を見せた。
高梁市松原町出身の平松さんにとって、高梁は漫画家を志した青春時代を過ごした特別な場所でもある。高校時代は、山間部の松原からバスで学校へ通った。
「松原から高梁まで、くねくねした山道を毎朝バスに揺られていました。バスに酔って、気持ちが悪くなりながら学校へ通ったことも、今となっては思い出ですね」
高校1年の時には、自作の漫画が雑誌の新人漫画賞に入賞し、作品が掲載された。後に人気漫画家として活躍する原点は、高梁で過ごした日々の中にあった。
平松さんは当時を振り返り、「高校生のころ、自分で漫画を描きながら、雑誌に載っているプロの作品を見て『これなら俺にも描ける』と思っていました。今見れば、自分の絵の方が明らかに下手なんですけどね」と苦笑い。その一方で、若い時に自分の可能性を信じることの大切さを強調した。
「若いころは自分のことを過大評価することがあります。でも、そのうぬぼれというか、『自分にもできる』という勘違いが、僕の場合は漫画家になることにつながりました。野球をしている少年少女たちも、『自分はうまいんだ』、『自分はやればできるんだ』と思うことが、ある程度は必要だと思います」
現在は米大リーグで活躍する選手も増え、子どもたちが世界を身近な目標として思い描ける時代になった。中でもドジャース・大谷翔平選手の大ファンだという。
「大谷選手を見ていると、褒められて育ってきた人なのではないかと感じます。昔のような根性論で、上から目線で厳しいことばかり言われてきたのではない気がする。人間はられるだけよりも、褒められて育った方が、もっと上に行けるのだということを実証している選手ではないでしょうか」
日本ハム入団時、大谷が投手と打者の「二刀流」に挑戦することについて、球界内では否定的な意見も少なくなかった。その中で挑戦を支持した落合博満さん(元中日監督)の姿勢にも触れ、「落合さんは『本人がやりたいのだから、やらせればいい』という考えでした。すごい実績を残した人が、若い選手の可能性を認める。あの姿勢は立派だと思いました」と語った。
そして、来年3月に高梁へ集まる野球少年少女に向けて、平松さんが最も伝えたい言葉は「続けること」だった。
「僕は今年で連載デビューから51年になります。51年も続けていれば、当然、山あり谷ありで、いろいろなことがあります。でも、続けていれば、たまにいいこともある。だから、続けることが大事だと思います」
プロ野球選手になるという夢を実現できるのは、ほんの一握りに過ぎない。それでも、好きなことに打ち込み、努力を重ねた時間は決して無駄にはならない。
「野球をしていれば苦しいこともあるでしょう。プロ野球選手を目指しても、実際になれる人はそう多くありません。それでも、自分の好きなことを続けるのは、自分にとってすごくいいことです。野球が好きな少年少女には、ぜひ続けてほしい。続けていれば、何かいいことがあるよ、と伝えたいですね」
人口減少が進む故郷への思いも口にした。
「高梁に限らず、地方では人口が減っています。その流れをすぐに変えることが難しいのなら、少ない人数でも、一人一人が自分たちのまちを盛り上げようとすることが大切だと思います。そのために、僕なりに協力できることがあれば、何でもしたいと思っています」
今回の野球教室は、発起人の上野さんが少年時代に藤田元司さん(元巨人監督)の野球教室へ参加した経験が原点となっている。プロ野球選手と触れ合った感動を、今度は故郷の子どもたちへ手渡したい-。その思いに同級生や地元関係者らが賛同し、協賛やクラウドファンディングを通じて開催費用を募りながら準備を進めている。
高梁で育ち、漫画家への夢を実現した平松さん。第一線で活躍した3人の元プロ野球選手。上野さんやその友人、知人。さまざまな人の思いが1枚のポスターに重なった。
ポスターは今後、アカデミーの告知活動などで活用される予定。平松さんは「今回のイベントを多くの人に知ってもらい、皆さんに注目していただければうれしい」と期待を寄せた。
