県岐阜商・横山「打ち勝つ」69年ぶり決勝へ 先天性のハンディも「大きな舞台でやれるんだぞってところを示していきたい」
公立勢で唯一4強入りした県岐阜商は20日、日大三(西東京)との準決勝に向けて兵庫県西宮市内のグラウンドで練習を行った。生まれつき左手指が欠損していながら聖地で躍動を続ける横山温大外野手(3年)は全力プレーで球場の雰囲気を変えることを決意。強打の日大三に打ち勝ち、公立勢としては2018年・金足農(秋田)以来で、同校としては1956年以来69年ぶりとなる決勝進出を果たすことを誓った。
県岐阜商・横山が聖地の“手綱”を握る。たったワンプレーで場内全体を味方に付けられる魅力あふれる球児。生まれつきのハンディをものともせず4強の壁を打ち破る。
「こういう自分のハンディがあって注目されている。大きな舞台でやれるんだぞってところを示していきたい」
生まれつき左手指を欠損している中、ハンディを感じさせないプレーで勝利に貢献してきた。19日の今春センバツ王者・横浜から金星を挙げた準々決勝。初回2死二塁で右翼線への痛烈なライナーを、右手につけたグラブを伸ばして背走しながら好捕。先制の危機を好守で救い「捕った後の歓声はとても気持ちよかったです」とプレーボール直後から場内を県岐阜商ムード一色に染めた。
ベンチの雰囲気もこのプレーでお祭り騒ぎ。試合直後、藤井潤作監督(53)は「ファインプレーで、みんながまた(新聞の)1面が横山だと(笑)」と盛り上がっていたことを明かし、ナインも横山に負けじと奮起。延長11回タイブレークの死闘を制する活力を生んだ。
ここまで全4試合に「7番・右翼」で先発し途中から左翼に回るなどしてフル出場。全試合安打も記録して16打数5安打、打率・313で2打点を記録。横浜戦では最速152キロ右腕・織田の直球を捉えて左前打を放つなどし「感覚はすごくいい」と好感触を示した。
この日の練習のノックでは、フェンスに跳ね返った打球を右手のグラブで捕球し、素早くグラブを胸に抱えて右手で送球。打撃では左手を添える形で力感なく構え、右手でリードするスイングで鋭いライナー性の打球を次々と放つなど、軽快に動いて汗を流した。
創部100周年の節目で16年ぶりの4強入り。指揮官は「伝統校として戦う」と意気込む。勝てば69年ぶりの夏決勝。立ちはだかる強打の日大三を前に横山は「徹底して打ち勝つ野球をしたい」と力勝負を宣言した。努力を物語る黒いマメが刻まれたその右手で、勝利の快音を響かせる。
◆横山 温大(よこやま・はると)2007年7月17日生まれ、18歳。岐阜県各務原市出身。170センチ、70キロ。右投げ左打ち。外野手。小学3年で緑陽スポーツ少年団で野球を始め、緑陽中では愛知江南ボーイズでプレー。県岐阜商では3年春からベンチ入り。50メートル走6秒2、遠投100メートル。
◆岐阜は東京勢に全勝 過去、春夏合わせて岐阜は東京勢に6戦全勝で夏に限ると4戦4勝。その内、県岐阜商は岐阜商時代を含めて春夏通算3戦全勝。岐阜と東京勢の最近の対戦は2009年夏の準々決勝で、県岐阜商が帝京に6-3で勝利。




