「高校野球神奈川大会・準々決勝、横浜５－４平塚学園」（２２日、サーティーフォー保土ケ谷球場）

　神奈川大会は準々決勝４試合が行われ、今春センバツを制した横浜は１点を追う九回２死二、三塁から、主将の阿部葉太外野手（３年）の右中間逆転サヨナラ二塁打で平塚学園に勝利。４強進出を決めた。

　敗者はもちろん、勝者にも涙があった。劇的なサヨナラ勝ち。奥村頼人投手（３年）、織田翔希投手（２年）は号泣した。その横で阿部葉は笑顔。「絶対に決めてやるっていう思いだった」と殊勲の一打を振り返った。

　絶体絶命まで追い込まれた。１点ビハインドの九回２死二、三塁、フルカウント。あと１球で勝敗が決まる場面。内角高めの直球を振り抜いた。痛烈なライナーが右中間フェンスを直撃。「しっかり自分のスイングすれば、ああいう軌道で飛んでいくと思った」と納得の一打で仕留めた。

　四回を終えて０－４。先発・奥村頼が二回途中３失点でＫＯされる誤算。３番手・織田が七回まで好投して流れを引き寄せた。阿部葉は「織田は代打を送られた時（七回）に目に涙があった。『絶対勝つから』って伝えて。頼人は１番を背負っているので準決勝、決勝は圧巻の投球をしてもらいたい」と話した。

　村田浩明監督（３９）は「正直非常に苦しかったです」と明かす。「阿部が追い込まれながらも執念で打てた。求めていた勝ち方が初めて横浜高校に来てできたかな。夏の大会は逆境だらけ。それを押し返した」と選手をたたえた。

　勝って涙。「この子たちが勝って泣いたのは初めて。成長できる１つの涙になればいい」と指揮官。阿部葉は「今日は負けゲームの展開。調子に乗ることなく、負けゲームだっていうところを全員が認めて、次に向けて準備していきたい」。崖っぷちを乗り越えて、春の覇者はまた１つ強くなった。

　◆阿部　葉太（あべ・ようた）２００７年８月６日生まれ、１７歳。愛知県出身。１７９センチ、８５キロ。右投げ左打ち。田原市立東部小２年から田原東部スポーツ少年団で野球を始め、田原市立東部中では愛知豊橋ボーイズに所属。横浜では１年夏からベンチ入り。５０メートル走５秒９、遠投１００メートル。