巨人“サイン見落とし”で2軍降格 阿部監督がリチャードに送った言葉の真意は-内田順三氏の視点「出るかもと思っていたかどうか」
巨人・リチャード内野手が13日に2軍降格となった。前日12日のソフトバンク戦でヒットエンドランのサインを見落としたことが原因。阿部監督は「自分が打つ、打たないよりも、チームがどうしたら勝てるかっていうね。そこの考えを切り替えて野球やってみてくれ」と指摘した。このメッセージの真意について、阿部監督をルーキー時代から指導した内田順三氏(デイリースポーツ・ウェブ評論家)が解説する。
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まず、数字を見ればリチャードは結果が出ていない(打率・095、2本塁打、4打点)。それでも阿部監督は何とか彼のいいものを出そうと思って起用していた中で、ボーンヘッドが出てしまった。厳しさを出すのは当然だよね。それに対してもし、「サインミスしたから落とされた」と考えているだけだとしたら、進歩がない。
プロの世界、1軍では長嶋監督が言っていたように「勝つ、勝つ、勝つ」ことが大前提。ましてやチームは1点を取ることに苦労している状況だ。いくらファームで5年連続の本塁打王といったって、彼の現状は7番、8番を打つ立場。エンドラン、バント、進塁打、何でも対応しないといけない。そう言った点では同じような立場にいるオコエの方が、「チームがどうしたら勝てるか」という姿勢が見える。
あのエンドランが出た場面は六回で0-0。リチャードの頭の中にエンドラン、バントが出るかもしれないという考えがあったかどうか。さらに言えば、ネクストサークルで先頭打者が出たらそうしたサインが出るかもしれない、と思っていたかどうか。野球は準備のスポーツだからね。そういった考えがあれば、あの打席はサードコーチャーのサインをしっかり見ていたはずだ。
広島で2軍監督をしていた頃、当時1軍の野村謙二郎監督から「4番であっても1軍で出るようなサインを出してください」という要望があった。サインに対してゲームの中で体験しながら覚えていくと、そうした野球観、野球脳が浸透するもの。プロのサインは複雑でバントのサインだけでも構えてするのか、バスターするのか、バスターエンドランなのか、偽装空振りなのか、数多くの種類がある。ただ、「あるかもしれない」と思ってサードコーチャーを見るようになったら、ミスはなくなってくる。
リチャードは右の大砲として獲得していて、阿部監督も当然、覚醒してほしいという思いはある。ただ、フリーハンドで打たせるほど、まだまだ信頼はできていない。次、上がってくる頃にはより厳しい目線も加わる。ファームで技術力を磨くだけではなく、野球への考え方も変えられるかどうか。阿部監督の「考えを切り替えて」というメッセージにはそういう思いが込められている。