広島商 3年ぶりセンバツ 目指せ94年ぶり2度目の全国制覇 拍手も笑顔もなし「ここがスタート」
第97回選抜高校野球大会(3月7日抽選、同18日開幕、甲子園)の選考委員会が24日、大阪市内で開かれ、広島商が3年ぶり23度目の出場を決めた。昨秋は広島大会で優勝し、31年ぶりに中国大会も制した。初出場した明治神宮大会では準優勝の快進撃。春夏合わせて計7度の甲子園優勝を誇る伝統校が優勝候補の一角として、1931年の第8回大会以来、94年ぶり2度目のセンバツ制覇を目指す。
午後4時10分。吉報を告げる校内放送が流れた。「本校野球部のセンバツ出場が決定しました」。そのアナウンスをかき消すかのごとく、グラウンドで声を張り上げながらダッシュを繰り返す広商の選手たち。拍手もなければ、笑顔もない。
主将の西村銀士内野手(2年)は「喜ぶのは夏に全国制覇してからだと思うので。まだ夏も春も始まったわけではない。ここがスタートだと思う」と表情を引き締めた。
創部125年、春夏通算で7度の甲子園優勝を誇る伝統校の自負がそこにはある。センバツ決定の瞬間も練習を継続すると、伝達式では校長からの激励を直立不動で聞き入り、即練習を再開させた。就任8年となる荒谷忠勝監督(48)は取材中もグラウンドの選手の動きに目を光らせながら、「出させていただくからには優勝を目指して、一つ一つ試合に臨んでいけるように準備していきたいと思う」と頂点を見据えた。
優勝を目指せるだけの実績がある。昨秋は広島大会を制し、中国大会でも躍進を見せて31年ぶり7度目の優勝を果たした。さらに初出場となった明治神宮大会でも東海大札幌、敦賀気比を破って決勝に進出。最後は横浜に3-4で敗れたものの、堂々の準優勝に輝いた。
昨年は広商にとって史上最高の秋を過ごした中でも、「ミスばかりだった」と荒谷監督は振り返る。犠打やスクイズなどの小技を駆使して得点を奪い、堅実な守備で勝ちきる野球が広商の伝統。この冬は試合の中での判断力を高めることに心血を注ぎ、この日行われた走者を想定したケースノックでも、ミスがあると部員同士で厳しく指摘する声が飛んだ。
現チームについて、西村主将は「目立った選手はいないので。スタンドで応援してくれている選手も含めて総合力で戦っているチーム」と話す。150キロに迫る球を投げる投手や飛び抜けたパワーを持つ打者はいない。その分、一人一人が役割を全うして、結果を残してきた。
荒谷監督は「彼らの良さは粘り強さ、やってきたことをそのまま出せることが良いところ。そこに心技体が備わって、センバツでどういう姿を見せてくれるか楽しみ」と選手たちに期待した。目指すは1931年の第8回大会以来のセンバツ制覇。94年ぶりの頂へ、広商は広商の道を行く。