星稜 勇気届ける1勝 被災した代打・東がV打 努力報われた!今冬打撃強化でバット振った「1日1000回」

 9回、代打・東は右前に2点適時打を放つ(撮影・佐々木彰尚)
 接戦を制し、大喜びでアルプススタンドに向かう星稜ナイン(撮影・石井剣太郎)
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 「選抜高校野球・1回戦、星稜4-2田辺」(18日、甲子園球場)

 開幕し、1回戦3試合が行われた。昨秋の明治神宮大会を制した星稜(石川)が21世紀枠の田辺(和歌山)を4-2で下し、今年1月の能登半島地震で大きな被害を受けた故郷に勇気を与える勝利を届けた。2-2の九回に代打・東汰生外野手(3年)が勝ち越しの2点適時打。石川県津幡町出身で自身も被災を経験した“苦労人”が殊勲のヒーローとなった。

 努力は報われることを東が大舞台で証明した。ぼろぼろになった手で、挫折だらけだった野球人生の全てを懸けて、聖地に快音を響かせた。

 「落ちてくれって思いで走りました。思いがあふれて声が出ました」

 同点で迎えた九回1死一、二塁。代打で登場し、公式戦初打席を迎えた。相手の暴投で1死二、三塁となり、一打勝ち越しの絶好機。内角直球を思いっきり振り切った。右前に弾む決勝の勝ち越し2点適時打。塁上で腹の底からシャウトした。

 星稜中では全国優勝を経験するも、自身は控え選手。高校では一度も背番号をもらったことがなかった。日の目を浴びてこなかったここまでの野球人生。それでも、いつかチャンスが来ると信じてもがき続けた。

 右手の指の根元には真っ黒になったマメが並んでいた。手のひらにも何度も皮がめくれて白く固くなった大きなマメがあった。東がどれだけバットを振ってきたかは体が物語っていた。今冬も打撃強化にテーマを置き、「1日1000回くらいは振りました」。ただ、野球の神様は東にさらなる試練を与えた。

 元日。新年早々から石川県のジムでトレーニングしていた途中に能登半島地震に見舞われた。建物は大きく揺れ、ジムのスタッフとともに安全な場所に避難。その後、津波警報が発令され、家族とともに夜まで近くの小学校に避難した。周囲に人命に関わる被害はなかったものの、断水は3日間続いた。「お風呂に入れなかった。家の物が倒れたりもしました」。学校のグラウンドにもヒビが入り、室内練習場の一部も破損。被災から立ち上がるところから東の下克上が始まり、甲子園でヒーローに輝いた。

 東と同じ星稜中で先発したエース・佐宗翼投手(3年)も「あいつは本当に努力をする。ずっとバットを振り続けて。あいつが決めてくれてうれしい」と破顔。誰もが認める苦労人が被災地に勇気を与え、山下智茂元監督の長男で、2023年に就任した山下智将監督(42)に聖地初星をプレゼントした。指揮官は「1点取るのも難しいし、1勝するのも難しい。生徒が頑張ってくれました」と教え子をたたえた。

 被災地代表校として迎えた特別な春だが、背負うものが増えたわけではない。「自分たちができることは一生懸命野球をすること。楽しみながらやりたい」と東。大好きな野球に打ち込む姿で被災地にエールを送る。

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