「日本ハム３－２楽天」（７日、エスコンフィールド）

　お立ち台で日本ハム・田中正義投手の手に記念のボールはなかった。「見つけた方は田中までお願いします」。ヒーローインタビューで笑いを誘った。１６年度ドラフトで５球団による１位競合の末にプロ入りし、７年目での初勝利。「時間はかかってしまったけど、こういう景色が見られてすごくうれしい」。実感がこもった。

　圧巻だった。同点の、九回のマウンドは最速１５４キロの直球で三者三振。サヨナラ勝ちと自らの初勝利を呼んだ。「調子は良かった。どんどん押していこうと思いました」－。

　ソフトバンク時代の６年間を「本当にすごく苦しんだ」と振り返る。何度も肩肘を痛めて結果を残せなかった。ソフトバンクへＦＡ移籍した近藤の人的補償での移籍を機に「今年こそはという強い気持ちがある」と誓った。「自分の体としっかり向き合って、細心の注意を払ってやっていきたい」。万全に整えて登板に備えてきた。

　新庄監督は「３人で終わらせてくれた結果がサヨナラにつながった」と絶賛。懸案だった守護神を得て、就任以来初の３カード連続勝ち越し。「少しずつ上を目指す戦い方ができている。こういう勝ち方を学ばせながら、上へ上へいきます」と手応えを明かす。

　入団会見で田中正が目標に掲げた「４月中に初勝利」。１週間ほど遅れて実現した。初セーブでは涙、この日は笑顔のお立ち台。インタビュー後に記念のボールは手元に渡った。「両親に渡したいと思います」。７年分の思いを届ける。