仙台育英の今夏1号は岩崎の決勝満弾 1カ月寝たきり…病で県大会ベンチ外の苦労人が大仕事
「全国高校野球選手権・決勝、仙台育英8-1下関国際」(22日、甲子園球場)
白球が左翼スタンドで弾む。仙台育英の5番・岩崎生弥内野手(3年)はダイヤモンドを一周し、ホームベース上で雄たけびを上げた。「行け!っていう思いだった」。大会史上4度目となる決勝戦での満塁本塁打を放ったのは、宮城大会ベンチ外の苦労人だった。
七回、3点リードでなおも1死満塁の好機に、高めの直球を振り抜いた。「ダイヤモンドを走っている時に拍手をいただいて、打ったんだなと感じた」と喜びをかみ締めた。チームにとって宮城大会を通じて今夏10試合目での初本塁打。岩崎にとって高校通算4本目は忘れられない一発となった。
1年前には想像もできなかった活躍だ。昨年6月に「運動誘発ぜんそく」や「食道裂孔ヘルニア」、「逆流性食道炎」と合併症を併発した。1カ月間寝たきりで、毎日のように吐き気と闘った。今年6月、やっと万全の体調で練習合流。代打出場を目標に練習を重ね、甲子園大会で背番号「14」をもらった。
くじけそうな時に励まされたのは須江航監督(39)からの電話だった。「(練習の)やり方はいくらでもあると言ってくれた。恩返しできてうれしい」。ベンチで岩崎を抱きしめた須江監督は「部員全員と東北6県の気持ちが乗り移った本塁打」とたたえた。
試合後はアルプスにいるチームメートの顔を見ながらあいさつ。「自分はずっとアルプスの方(ベンチ外)だったので気持ちも分かるし、みんなが支えてくれなかったら1本は出なかった」。病を克服し、仲間とつかんだ大旗に胸を張った。
◆満塁本塁打 仙台育英・岩崎生弥内野手が決勝・下関国際戦の七回に記録。3回戦で近江の山田が記録して以来、大会史上54本目。決勝では第90回大会の大阪桐蔭の奥村以来で4本目。
◆無失策試合 決勝の仙台育英-下関国際で記録。



