馬場敏史氏の眼「キャンプ“通”の楽しみ方は午前中にあり」
球春を告げるプロ野球のキャンプイン。今年も、新型コロナウイルスの影響で、多くのファンの前で練習に励む姿を見せたり、直接触れ合ったり、という場面は激減しそうだ。また選手の感染も多い。それでも、各球団の今季を占うという春季キャンプの位置付けは変わらない。選手、指導者として30回を超えるキャンプを過ごしてきたプロ野球OB・馬場敏史氏(56)が、“キャンプの真の見どころ”をお伝えする。
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去年は西武のコーチとして過ごしたキャンプでしたが、シーズンの成績につなげることはできませんでした。
コーチの仕事としては、前年をしっかりと振り返り、ミスを減らし、選手の長所を伸ばすためのメニューを考えて、キャンプに臨みます。しっかり練習をして、でも故障者が出ないように、という配慮も忘れず。
それだけやっても、主力が不振だったりすればチーム成績は上がらない。いいキャンプがそのままシーズンに直結しないこともあって、そこにはジレンマを感じますが、やはり春季キャンプは大切ですし、強いチームかどうか、見えて来るものもあります。
大まかな流れは、どの球団も大差ないと思います。午前中に、まず体を温めて、投手、野手交じって連係などフォーメーションをしっかりと身につける。その後は投手、野手に分かれてピッチングやバッティング。一通りのメニューが終わると、特守、特打、ウエートなど個人練習というところでしょうか。
実際にキャンプ地に行けば、ファンの皆さんにはお気に入りの選手がいて、より近くで応援できる、午後の練習に注目するでしょう。それも大きな楽しみです。
一つだけ、“通”の楽しみ方を言うなら、午前の練習です。野球で計算が立つのは守備です。しかも、チームフォーメーション。キャンプ中に、1個のボールに全選手が集中するのは、この練習しかありません。
例えば攻撃型のチームであっても10対5で毎日勝てるわけではありません。この失点「5」を守備力で「0」に近づけていけば、打てない日でも勝てる可能性が高まる。失点は、疲れにも結びつくので、勝ち負け関係なく少ないに越したことはないんです。そこに直結するのが連係プレーです。
キャンプでしかできない、投手、野手がボール1個に集中するこの練習を大切にしているチームは、間違いなく強いです。ひいきの球団の、朝のプレーは要注目ですよ。