昨秋ドラフト指名漏れの大阪偕星学園ドミニカ人留学生コンビが卒業 2人で大学進学しプロ目指す

29日に卒業式を迎えたダビッド・バティスタ・モレノ(右)とワーネル・マイケル・リンコン・デラクルーズ(左)
ダビッド・バティスタ・モレノが授業中に書いた国語のノート
2枚

 大阪偕星学園のドミニカ人留学生コンビのダビッド・バティスタ・モレノ(18)、ワーネル・マイケル・リンコン・デラクルーズ(18)が29日、卒業式を迎え、進学する関東の大学からNPB入りを果たすことを誓った。

 ダビッドは「1年から大学の試合に出たい。それでドラフト1位で(プロに)行きたい」と決意。ワーネルは「ちゃんと練習して、ちゃんと体を作って160キロを投げたい。ドラフト1位になりたい」と宣言した。

 日本で野球を学ぶために祖国を離れた2人。文化、言語も全く違う環境に苦しみながらも、3年間の高校生活で一回りも二回りも大きく成長した。

 他の生徒が12月に卒業を確定させる中、2人は1月にようやく決まった。一般生徒と同様の日本語でつづられたテスト問題に苦戦。ダビッドは「世界史と国語が難しい」と頭を抱えた。

 記述式の回答欄には特に苦しんだ。ただ、日本語を一文字ずつ丁寧にノートに書いて練習。入学時は9個あった追試も最後は2個となり、言語の壁を乗り越えて卒業にこぎ着けた。

 「野球より勉強を一番頑張りましたね」とダビッド。全ては野球をやるためだった。2人を3年間見守り続けた有明大志郎先生は「(勉強をやらなければ)やばいというのが先に来る。やらなければいけないことと、やりたいことの区別が付いてました」と2人をたたえた。

 3年夏の大阪大会は1回戦で敗退した。自ら望んで門をたたいた日本の高校野球。それでも、納得できないことはたくさんあった。入学当初は「手にまめができないと試合に出られない」という基準が設けられていた。ダビッドは元々手の皮が分厚く、いくら振り込んでも手にまめができず。「こんなはずじゃなかった」と泣きながら、有明先生とバットを振り込んだ。

 そして、報われた。「日本みたいに(ドミニカではバットを振り込んだり)しない」と苦しみながらも、周囲に努力を認められ自分たちの代では主将に。最後の夏の大会では、住之江公園野球場の右中間に場外ホームランを放ち、練習の成果を発揮した。

 ワーネルは、ドミニカと日本の気温の差が影響し、来日早々に右肘を故障。最速137キロだった球速が115キロまで落ちた。それでも、「肘のトレーニング、肩のトレーニング、どれをやろうかな」と気持ちは落とさず。リハビリ期間中にYouTubeで熱心に研究し、最速は145キロまで向上。最後の夏は背番号1を勝ち取った。

 昨秋のドラフトでは、2人でプロ志望届を提出するも指名漏れ。ダビッドは涙を流し、ワーネルは「悔しかった」と唇をかんだ。次の目標は大卒プロ入り。2人で関東の同じ大学に進学することが決まっており、「(有明先生の母校である)日体大を倒したい」と燃えている。

 現在、高校で主に外野を守っていたダビッドは三塁に挑戦。「プロは(右打ちの)外野手が多いので」とプロ入りのために、新たに取り組み始めたという。ワーネルは「力を上げたら(プロに)行けると思う」とウエートトレーニングに明け暮れ、大学野球に備えている。

 コロナ禍の影響もあり、3年間で1度も母国に帰れず。いまだ帰国の見通しも立っていないが、ダビッドは両親に写真を送って卒業を報告。ワーネルも両親から「これからもっと頑張れよ」とエールをもらった。

 2人で語り合うドラフト1位でプロ入りの夢。関東の地で腕を磨き、実現させてみせる。

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