高代延博氏が侍ジャパンにエール 意思統一と細かい確認作業で日本野球実践へ

 28日に東京五輪初戦を迎える侍ジャパン。金メダルが期待されるが、普段とは違う環境の中、未知の海外勢を相手に勝ち抜くのは容易ではありません。デイリースポーツ評論家が自らの経験を基に、日の丸戦士にエールを送る特別企画「五輪の書」。最終回は国際大会を経験した元WBC日本代表内野守備走塁コーチの高代延博氏です。

  ◇  ◇

 私は09年と13年のWBCで日本代表の内野守備・走塁コーチを務めさせてもらった。その経験を踏まえ、東京五輪に臨む侍ジャパンにエールを送りたい。

 国際大会では、日本との「野球の違い」が注目を浴びる。中国はラフプレーが多く、一塁を駆け抜ける時に平気で一塁手の足を踏む。韓国はけん制球がしつこい、など各国に特徴はある。もちろん敵を知ることや環境に対応することは大切だ。だが、まず自分。チームとしての戦い方を明確にすることが重要だ。

 野球は力対力で勝負する面もあるが、日本は組織力で国際大会を戦ってきた。09年WBCの原監督、13年WBCの山本監督が率いた代表は、指揮官が明確に方針を示し、結束力があった。稲葉監督も準備を進めていると思うが、「こういう野球をする」という方針を、選手へしっかり伝えておいてもらいたい。

 例えば、走者を進められる場面は必ず送りバントをするのか。極端なことを言えば、4番でもバントをさせるのか。試合中に選手が「え、バント?」となってはいけない。

 監督が方針を伝えた上で、担当コーチは選手と細かいプレーを確認する必要がある。国際大会は準備万端のつもりでも、想定しないプレーが起こり得る。13年のWBC。準決勝・プエルトリコ戦でのダブルスチール失敗が敗戦の一因となった。

 2点を追う八回1死一、二塁。初球から「走者はいつスタートを切ってもOK」というグリーンライトのサインが出ていた。2球目。一走・内川は二走・井端が三盗をやめたことに気づかず、二塁へいってしまった。

 担当コーチとして、選手に「二塁走者はスタートを切っても止まることがある」と伝え切れていなかった私の責任は大きい。ただ、経験豊富な選手でも、重圧がかかる国際大会ではああいうプレーをしてしまう。内川は「一生忘れません」と言ってきたが、「オレも一生忘れられんよ、ごめんな」と話したことを今も思い出す。悔いが残ることは、二度と起きてほしくない。

 野球には膨大なケースがあり、短期間で全てをケアすることは難しいが、「改めてグリーンライトとは」、「二、三塁での内野ゴロで走者の動きは」など緻密な野球を実践するために、可能な限り準備をしてもらいたい。

 また、首脳陣は選手の状態を把握することも重要だ。一流選手も初めて日の丸をつけた時は震える。コーチの私でも足が震えたぐらいだ。試合を重ねて慣れるものでもない。09年のWBCはイチローでも日本ラウンドで苦しんだ。重圧なども加わるだけに、短期決戦では首脳陣の思い切った判断も重要になる。

 各チームの宝物を預かる稲葉監督は大変だと思うが、一枚岩となって金メダルを獲得してもらいたい。

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