大人になったマー君 元WBC日本代表コーチの高代氏が“その変身”ぶりに感心
楽天・田中将大投手(32)が20日、巨人とのオープン戦に登板し、7回を3安打、1失点にまとめ、順調な仕上がりを披露した。WBCで共に戦ったデイリースポーツウェブ評論家の高代延博氏は「投球が大人になった」とメジャー仕込みの投球に舌を巻いた。
貫禄のピッチングだったね。公式戦が始まる前のラスト登板だったが、100パーセントに近い仕上がりを感じた。
特に直球のコントロールが素晴らしく、要所で打たせて取る計算された投球も見事だった。
球速は150キロに届く程度で、少し落ちているかもしれない。ただその分、力感を消して軽く投げて、ほとんどを狙ったコースに収めている。
7回を投げて球数は89。100球程度を想定しての登板だったと思うが、直球にスライダー、スプリットと持ち球を自在に操っていたね。
スプリットは空振りも取れるし、カウント球にもなる。もともと得意にしていたスライダーもよかった。
初回、先頭の梶谷に対して、追い込んだあとの3球勝負で投げたひざもとのスライダーは、空振りした球が足に当たった。よほどキレがいいのだろう。
ストライク先行でどんどん追い込んでいったところにも貫禄を感じた。
(初回先頭から四回、本塁打を浴びた若林まで、打者11人に対して初球すべてストライク。常に投手優位の関係をつくって圧力をかけていた)
若林にはカウントが2ボール1ストライクとなり、低めではあったが、甘いコースに入ったスライダーを打たれたもの。「ここは打たれるな」との確認ができたぐらいにしか考えていないと思う。
田中将大とは、私がコーチとして参加した2009年と2013年のWBCで一緒だった。最初はチーム最年少だったが、2度目のときはエースの期待をかけられていた。
しかし、先発した初戦のブラジル戦で好投できず、その後はリリーフに回ることになった。試合には勝ったが、甘い球を打たれて本当に悔しそうにしていた。その時の表情が今でも忘れられない。
その年のシーズンは24勝無敗でチームをリーグ優勝に導き、日本一になった。そして日本を飛び出し、メジャーリーガーに。
あの試合がきっかけになったかどうかは分からないが、「打たれた悔しさ」をバネにするとは、こういうことなのかもしれないね。
四回が終了して、捕手の太田とベンチで話をしていた。口元をタオルで隠していたし、私は読心術を心得ていないので、どんな会話をしていたのか、想像でしか語れないが、若林の一発を2人で反省していたのだと思う。
こういう若い捕手に対して教えることのできる投手は本当に貴重だ。ダイエー時代の工藤公康を思い出す。投手の特長を生かすリードとは何か。若い城島健司を上手に教育していた。
大人の投球ができるようになっている田中には何の不安もない。盤石だ。
楽天の先発投手陣は田中のほかに涌井、岸、則本、新人の早川とかなり高いレベルにある。12球団一かもしれない。
現状、浅村をケガで欠いているが、攻撃陣の顔ぶれも頼もしい。今年は面白い存在になると思っている。公式戦が楽しみだね。