“天理のバレンティン”神野連発 元阪神・中村監督に甲子園初勝利届けた

 「全国高校野球選手権・2回戦、天理6-0大垣日大」(13日、甲子園球場)

 2回戦4試合が行われ、天理(奈良)は“天理のバレンティン”こと神野太樹外野手(3年)が、2打席連続本塁打を放って3回戦へ進出した。プロ野球の近鉄、阪神で活躍した中村良二監督(49)は、春夏通じて甲子園初さい配で初勝利。1986年夏の全国制覇時の主将と4番でもある指揮官は、涙を浮かべて勝利を喜んだ。二松学舎大付(東東京)は、エース・市川睦投手(3年)の投打にわたる活躍で明桜(秋田)を破った。

 本家にも負けない豪快な連弾だった。色黒で筋肉質の風貌から“天理のバレンティン”と呼ばれる神野が、自身初で史上33人目の2打席連発。中村監督へ甲子園初星を届けるアーチに「出来過ぎ。監督も初勝利なので、恩返しできたのがうれしい」と笑顔を見せた。

 二回無死は中堅右へライナーの先制ソロ。「今までで一番いい打撃だった」と振り返る一発で勢いに乗った。四回1死は左中間へソロ。中村監督も高校時代は経験がない2打席連発に「監督を超えられたのはうれしい」と白い歯を見せた。

 2年間の悔しさを晴らす大会だ。1年だった15年夏の甲子園は、4打数無安打で初戦敗退。2年夏の奈良大会決勝・智弁学園戦では2点差の無死満塁で捕邪飛に倒れ、チームは甲子園出場を逃した。

 野球ノートには「自分のせいで負けた」と書き込んだ。新チームからは練習で追い込み、個人的な欲も捨てた。「みんなのプラスになる」。この日の朝も野球ノートを見直し、有言実行を果たした。

 主砲の奮起と、背番号17・坂根佑真投手(2年)の完封もあって初戦は快勝。中村監督は「100点満点です」。12日には恩師でもある前監督の橋本武徳氏に、帽子のひさしへ「笑」の一言を書き込んでもらっていた。ただ、試合を振り返るうちに感極まった。

 「まさか僕がね…。母校のユニホームを着て、甲子園へ帰って来られるとは思ってもいなかったので…」。言葉に詰まり、目に涙を浮かべた。元プロ監督の下、名門が新たな一歩を踏み出した。

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