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山下智茂氏×履正社・岡田龍生監督対談【3】恵まれない環境で生まれた練習の工夫

山下氏(右)とともに練習を見守る岡田監督
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 星稜総監督の山下智茂氏(71)に、明治神宮大会で初優勝した履正社の岡田龍生監督(55)が、選手育成やチームづくりの理念を語った。「ロボットのように操縦されては何も考えられなくなる」と主体性を養う指導は、ヤクルト・山田、オリックス・T-岡田ら強打者を生んだ。山下氏も「出会いが打者を育てる」と自らの経験を振り返った。

  ◇  ◇

 (話は変わって)

 岡田龍生監督(以下、岡田)「最近言われている『4スタンス理論』(体のバランスの取り方を4つの傾向に分ける理論)では、人間には持って生まれたタイプがある。いろんな調べ方があって、体重の乗せ方も(足の)前の内とか前の外とか。もともとA1の子にB2のこと言ってもできない。一概に僕の考えを言っても難しい。コーチや部長にも、(タイプが違うと理論も)当てはまらないらしいと言っています」

 -山下氏はタイプをどう見極める?

 山下智茂氏(以下、山下)「経験しかないな。まず性格を見る。知能指数、家庭環境から親の職業、血液型とかを見て、徐々に教え込んでいく感じ。若い時と今とでは、教え方が違ってくるよね。若い時は自分の型にはめようとするから失敗する。指導者が勉強しないと子供はついてこないよね」

 岡田「私も感覚を聞きますね。お前は今、どんな感覚って?昔は本人の感覚なんて聞いてなかった。でも、真ん中を振ってみろと言っても、インコースの死球みたいなコースを振る子もいる。自分の感覚と体の使い方が違っている場合って結構ある。山下先生が言われたように、昔は(自分からの)一方通行やったのに、今はお前の感覚はどうなん?お前はどんな風に思ってるの?と聞いて、それなら今振っているところは全然違う、体の使い方が全然違うと言いますね」

 山下「確かに素振りで真ん中を振れと言うとすごいところを振っている子がいる。それ真ん中か?体に当たっているぞっていう子もいる」

 岡田「だからベースを書くか置いて、そこを振ってみろと言わないとダメですね」

 (グラウンドでのノック後)

 岡田「見ていただいてどうですか?」

 山下「すばらしいです。高校生に一番欠けているものを練習している。外野がボールを捕りに行く時に、高校生はゆっくり行って全力で投げるから暴投する。プロは全力で行ってゆっくり投げる。その練習に感心しました。内野手も実戦的な練習をしている」

 岡田「(監督就任当初は)僕一人だったので、一人でたくさんの人間を動かすことばかり考えていたんです。グラウンドは狭いところでコーチもいない。遊ばせる人間を少しでも減らそうと思って一人でランダムに打った。しっかりノッカーに集中するように。普通のシートノックだったら、三塁に打ったら二塁にはこないのでボーッとするけど、それをなくそうと思った。一人のノッカーでたくさんの人間をどうやって動かすかがスタートでした」

 山下「集中力とスタミナがつくね。バンバン(ノックの球が)来るから」

 岡田「1年生は最初はついて来られないですね」

 山下「僕も部員8人でのスタートだったから、内野ノックを速いスピードで一人で打っていました。だから、選手は30分もたなかった」

 岡田「技術はもちろん体力づくりも含めたトータルのトレーニングにもなりますね。シートノックを見ていると、ボーッと人ごとになっているチームもありますので」

 -監督としてのスタートは似ている。

 岡田「(現在は専門学校と共用のグラウンドがあるが)最初は学校の狭いグラウンドでした。(就任時は)部長も(兼任で)僕一人。夏に勝ち上がっていったら大変です。責任教諭は最後まで(ベンチを)確認して出ないといけないし、監督として取材を受けないといけない。それで学校は、初めて部長と監督の2人がいると知ったほどで」

 -山下氏も最初は道具もなく、安いバットを買いに行ったことも。

 山下「富山まで作りに行って、お金がないからツケにしてもらいました。校長に電話してくださいって(笑)」

 岡田「特待生をとって、寮もあると思われがちですが、学校自体に特待生制度がないんです。寮もなく、神宮のメンバーもみんな通いの子です。最初は11人で、その中に野球が素人の子が3人いました。学校は野球に力を入れるつもりはなく、商業高校をこれから進学校に切り替えようとした最初の頃でした」

 -環境的にも苦労した。

 岡田「それまでの監督は3年以上続いたことがなかった。軟式、硬式野球、サッカー、ラグビー、弓道がありグラウンド全面を使えるのは火、金。水は内野だけ、月と木は全く使えない。土日は半分ずつ。グラウンドを使えないから守備練習がバント練習しかできなかった。工事現場の投光器をいっぱい買ってきて、そこだけ照らして練習するという感じ。打つ練習は全くできなかった。ここ(現グラウンド)だと5カ所で打って、下も2カ所の7カ所で打って7カ所でティーができるけど…。(強くなったのは)ここができたのが大きかった」

 山下「僕らも校舎の電気をつけて、それでナイターでしたね。ノックやバント練習ばかり、グラウンドは内野だけ。グラウンド整備をしても体育の授業でがちゃがちゃになる。だから縄を張って、体育の先生といつもケンカでした」

 岡田「その頃は学校でいつもマウンド削ってまた戻してとやっていました。野球部は(校内で)二の次三の次でしたから」(4に続く)

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