山下智茂氏×履正社・岡田龍生監督対談【2】松井も山田も「引っ張る」ばかりだった

 星稜総監督の山下智茂氏(71)に、明治神宮大会で初優勝した履正社の岡田龍生監督(55)が、選手育成やチームづくりの理念を語った。「ロボットのように操縦されては何も考えられなくなる」と主体性を養う指導は、ヤクルト・山田、オリックス・T-岡田ら強打者を生んだ。山下氏も「出会いが打者を育てる」と自らの経験を振り返った。

  ◇  ◇

 山下智茂氏(以下、山下)「山田君のフォームで聞きたいことが。(左足を)上げてから打つ瞬間にパッと(前方へ)やるでしょ?あのタイミングは何なんですか」

 岡田龍生監督(以下、岡田)「最初はすり足だったんです。2軍の打撃コーチが池山さん(現楽天コーチ)だった時に、自分でタイミングが合わなくなった時があり、それなら足を上げろと言われたらしい。池山さんはすごく足を上げていた人だった。僕なんて足を上げたら余計に合わないと思うけど、足を上げたらえらくタイミングが合うようになったらしいです。しかもあいつは上げた足が一回ホームベースの方に来る。あそこが間なんです。(巨人の)坂本もそうですね。足を上げても絶対に(体は)前にいかない。頭はきっちり残ったまましか打たない。前にあいつに話を聞いたら、前に出て行かないための間をあれでつくっているらしいです」

 山下「最近はインコースをさばけるようになった。ものすごい努力したんじゃないかなと思うけど」

 岡田「杉村さんとやっているティー打撃は、追い込まれてもインコースに来たらファウルでいいという練習ですね」

 -履正社の打者は総じて体が前に流れない。

 岡田「自分のボディーゾーンでボールを捉えろと言っているんで、できるだけ呼んでこないといけない。もともとは中西太さんや阪急の西本監督の理論だと聞きましたが、ヘソから水平に棒がついており、この棒で(バットの)ヘッドを走らせる感覚。バットのヘッドが棒を先行せなあかん。棒をバットが追いかけていく感じです。高校生は体が曲がってバットが遅れてくるから、棒をバットが追いかけてくることになる」

 山下「松井の理論と一緒やね。ヘソの前にっていうのが。絶対に前にいかない。引きつけて引きつけて打つ」

 -軸足の重心は。

 岡田「あまり後ろ足に残せ残せと言うと、踏み込めなくて“明治の大砲”みたいになる。小さい時から(体重を)残せ残せと言われてきているから、残しすぎて左が引けてしまって飛ばない。極端に言えば、軸足が動いても自分のボディーゾーンで打てばいい」

 -松井の高校時代は、逆方向ばかり練習させた。

 山下「逆方向は引きつけて打たないと飛ばないから、最初はそればかり。これができないとダメだって」

 岡田「中から打たないといけませんね。(左打者の)安田は神宮で左中間に(二塁打を)やっと打ちました。山田もそうだけど、逆方向へ“引っ張る”という感覚がわかったと思うんです」

 -T-岡田は最初、引っ張ってばかりだったと。

 岡田「山田もそうです」

 山下「松井もそうだった」

 岡田「これならプロでもやれるなというやつは、3年になったらうちのグラウンドの(右打者は)右中間へ放り込む。土井(元巨人)も山田も。岡田は2年くらいから90度どこでもホームランを打っていたけど」

 山下「打者というのはどうしても引っ張りたがるよね。大きいのを打ちたいから右打者は左翼、左打者は右翼へ。そこの意識を変えないと」

 岡田「最初は何も言わなかったんです。岡田はそこそこ打てるやろうと思っていたけど、二ゴロばかり打っていた。1年から4番で使っていたけど、フライも上がらない。本人も何でやろうと思っていたでしょう。ある程度の時に、投手は中学生レベルの球じゃないから、そう簡単に打てないと話をした」

 -履正社は、1年生でもきちんと肩の開きを我慢する。

 岡田「だいぶ浸透してきています。上級生とティーをやったり打撃練習でもこうやって打たなあかんと話をする。外回りで遠心力を使って、金属バットで真ん中外よりの甘い球をドカンと左翼に運ぶようなのが、中学生のよく打つ打者。中から打てる子は中学生でもずば抜けている子です。人によってどう見るかは違うと思いますが。体重移動は僕は股関節から股関節に乗せられたら十分やと思うんです」

 (話は変わって)

 岡田「山田は左手にマメができないんですよ」

 -それだけ力が入っていない?

 岡田「僕は打撃は後ろ手(右打者の右手、左打者の左手)が大事だと思っています。山田も岡田も後ろ手が使えるようになってから、逆方向へ飛ばせるようになった。今の子は金属バットで打つから、後ろ手が体側(軸足側の脇腹付近)で止まってしまう。それで、上体を振ってバットを振ろうとするからヘッドが出てこない。力任せになってしまう。いわゆる(横の)空手チョップのようにしようとすると後ろの肩が下がります。でも、(右打者も右手が正面からの球をつかむしぐさで)こうすると肘が(ヘソ方向へ)入ってくるから後ろの肩は下がらない。右手が先行して左手を振り抜くイメージです」(3に続く)

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