阪神の「出世部屋」とは?
【1月26日】
ジャイアンツの選手寮が新しくなった。昨年末のことだ。川崎市のジャイアンツ球場に隣接し、最新鋭の設備が備わっているそうで、入寮した選手たちはみんな感激していると聞いた。
新寮内の動作解析室には1億5000万を投資したのだとか。ハイスピードカメラによって投球動作などをデータ化し、指導者らと共有するという。旧寮のスイングルーム、いわゆる「松井部屋」に代わるスイングエリアも新設されるなど、球界随一の育成設備を整えた。中央大からドラフト1位で入団した西舘勇陽(にしだて・ゆうひ)は新寮で満足げに写真におさまっていたが、果たして「松井部屋」のように自室を「出世部屋」にできるか-。
そういえば、タイガースの独身寮・虎風荘に「出世部屋」はあるのだろうか。かつて井川慶の部屋に藤浪晋太郎が入ったときにそんなふうに呼ばれた記憶もあるが、それが松井秀喜の寮部屋のように「伝説」になっているとは聞いたことがない。
タイガースのファーム関係者に聞けば、皆さん「今はないです」と口をそろえる。でも、確か、西舘の中央大の先輩・森下翔太が昨年入寮した部屋は2年前まで「佐藤輝明が使っていた」と聞いたことがある。
気になったので取材してみると、寮は部屋に空きが出てから新人への割り振りとなる為、いわゆる「縁起部屋」に必ず大型新人を入れることはないそうだ。ただし、入寮日のメディア対応で注目度の高い選手が自室のバルコニーから手を振る「絵作り」の撮影が恒例行事になっているので、球場側から目立つ部屋にドラ1が入ることが多くなったことは事実なのだとか。なるほど、確かに歴代のドラ1は部屋の窓から顔を出して撮影に応じ、それが入寮翌日の紙面に載っている。
ほかには、ルーキーの中でも年長者を比較的外音の静かな部屋に…そんな配慮はあるそうだが、それ以外の理由で作為的に割り振りすることはないという。球団関係者によれば「ルーキーがそういうことを意識しないように」しているそうで「出世部屋」という認識はファーム界隈では「ない」。だから、これから先、「輝部屋」「森下部屋」と言われ語り継がれることもどうやらなさそうだ。
とはいえ、「出世」選手の部屋を引き継ぐのは悪い気はしないだろう。
例えば…岡田彰布がその潜在性を称賛する2年目左腕・門別啓人は昨年誰の部屋に入ったのだろうか。
彼は中野拓夢が出た部屋に入ったそうだ。中野といえばWBCの世界一しかり、ドラフト6位からの「出世頭」ともいえる。野手投手は異なれど、1軍キャンプスタートの門別にとってあやかりたい存在…って、そんなことで盛り上がるのは当欄くらいか。本人は地に足をつけ出世街道を着々と…。
フル稼働する「虎風荘」は全32部屋。新設される尼崎の新選手寮は部屋数が更に増えるというが、出世部屋??一つに限定できません…そんな答えがタイガースの未来でありますように。=敬称略=