巨人・阿部監督から阪神・原口へ直筆色紙「御苦労様でした」球団の枠超えた粋な惜別エール「脅威を感じる打者でした」
今季限りで現役引退する阪神の原口文仁内野手(33)に、巨人の阿部慎之助監督(46)から直筆のメッセージが届いた。原口にとって小学3年生で野球を始め、プロ野球選手を夢見た憧れの存在。達筆で「御苦労様でした」としたため、敵将として「特に代打になってから対戦を迎える度、すごく脅威を感じる打者だった」と賛辞をはなむけの言葉にした。球団の枠を超えた粋な惜別エール。16年間のプロ野球人生を熱い言葉でたたえた。
シーズン中はライバル関係でも、野球人として確かな絆がある。打席に立つ姿に感じた熱き思いがある。巨人を指揮する阿部監督が、引退する原口にメッセージを送った。色紙に「御苦労様でした」とつづり、称賛したのは奇跡の軌跡。大病から復活を遂げた精神力と、代打の切り札として打席に立つ集中力だった。
「一度はガンという病を患いながら、再びグラウンドに立った姿には本当に驚かされました。特に代打になってからは打席で対戦を迎える度、ベンチからどう抑えるか脅威を感じる打者でした」
捕手・阿部は原口にとって特別な存在だった。小学3年生の秋。父・秀一さんに連れられて、神宮球場で巨人戦を観戦した。初めて生で見たプロ野球選手。中でもホームに座る背番号10に憧れを抱いた。初めて買ってもらったのは阿部モデルのミット。試合観戦できる日は午後4時の開門に並び、練習する姿からネットにかじり付いて見た。
現役時代に交流はなかったが、大切な写真を携帯に残している。小学4年生の冬、埼玉県熊谷市の八木橋百貨店でサイン会があった。父と列に並び握手してもらった1枚を、今でも携帯の画像フォルダに保存。この出会いがきっかけで、所属した少年野球チーム「寄居ビクトリーズ」(現・キングフィッシャーズ)では外野を守っていたが、監督に「キャッチャーがやりたい」と直訴した。
幼少期、父と何度も通った東京ドーム。プロでは打席で感動を届けた。大腸がんを克服して現役復帰し、プラスワン投票で選出された2019年の球宴。九回2死一塁から代打で登場すると、豪快なスイングで左中間に2ランを放った。今季は9月13日の巨人戦、代打で今季初安打を記録。家族も見守る中、一塁にヘッドスライディングしてつかんだ1本は、レギュラーシーズンで現役最後の安打になった。
16年間の現役生活に別れを告げる原口を、阿部監督は「まずは心と体を休めてほしい」とねぎらった。「これからも野球界に貢献して欲しい思いもあるけど、なによりも酷使した体をしっかりと休めてほしい」。巨人と阪神-宿命のライバルだが、球団の枠を超えて届けた惜別エール。幼少期からいまでも原口が憧れるヒーローが、不屈の野球人生のラストに花を添えた。
◆原口の2019年球宴VTR “2打席連続本塁打”でファンを沸かせた。7月12日の第1戦(東京ドーム)で九回2死一塁から代打で登場して2ラン。さらに翌13日の第2戦(甲子園)では「7番・DH」で先発出場して二回の第1打席でソロ本塁打を記録。阪神選手の球宴2試合連続アーチは史上4人目の快挙だった。
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