「阪神１－０ヤクルト」（８日、甲子園球場）

　阪神が連敗を２で止め、今季甲子園初勝利を挙げた。岡田彰布監督（６５）にとっては２００８年９月２９日の広島戦以来、５３０４日ぶりの聖地星。オーダー入れ替え、リクエストの要求、八回に石井を起用した新継投もズバリ的中しての逃げ切り勝利。指揮官のタクトがさえ渡った。

　勝利への渇望が虎将を突き動かした。前日の甲子園開幕戦を逆転負けで落とし、今季初の連敗で迎えた一戦。岡田監督は開幕７試合目にして、投手以外は固定していたオーダーに手を加えた。「１年間、不動のメンバーでできないし、昨日はね、普通のゲームで負けたんで」。６番から並んでいた森下、梅野、小幡をベンチに置き、島田、坂本、木浪を送り出した。

　“森下外し”はヤクルトの先発予定だった左腕ピーターズに代わって右腕の尾仲が登板した影響もあったが、「調子とかもあるんでね。休養と言うほど、そんな力ないと思うけどね、はっきり言うて。気分転換というか、長いシーズンね、そういう使い方になるかな」。現状を勘案しながら、決断を下した。

　初回から指揮官は動いた。１死二塁からノイジーが放った右中間へのライナー。右翼・サンタナがスライディングキャッチを試みて好捕。飛び出していた二走・中野は戻れず併殺となった。しかし、岡田監督は「打った瞬間、ヒットと思ったから」と間髪入れずリクエストを要求。リプレー検証の結果、サンタナはワンバンでの捕球と判定が覆った。開幕から５度目のリクエストが初めて成功。１死一、三塁と好機は広がり、大山の先制犠飛を呼び込んだ。

　継投でも動いた。１－０の終盤には「八回の男」として石井を投入。不調の浜地に代わる起用が奏功し、最少得点差を維持したまま守護神へとつなげた。

　“スミ１”で敗れた前夜から一転、執念のタクトで“スミ１”勝利をもぎ取った。岡田阪神の甲子園勝利は２００８年９月２９日の広島戦以来、実に５３０４日ぶり。今季１２球団最多を更新する４万２５８０人の大歓声を浴び、喜びもひとしおと思いきや「まあ、そうでもないよ。まだまだ、ここで７０試合ぐらいせなあかんのやで」と先を見据えた。

　１８年ぶりの“アレ”を託され、再びタテジマに袖を通した。年齢を重ね、ベンチで柔和な笑みもこぼれるが「表情と心は違うよ、そら」と本音も漏れる。笑顔の裏に勝負師の顔を隠し持ち、円熟の智将は采配を振るう。