「巨人２－３阪神」（２９日、東京ドーム）

　非常に難易度の高いミッションだった。ほぼ真後ろに高々と舞い上がった打球。フェンスに直撃すれば試合の流れを変える飛球を阪神・近本が完璧なプレーで阻止した。魅せて、救ったジャンピング捕球。失点を最小限に食い止め、勝利への礎を築いた。

　１点差の五回２死一塁。吉川が放った打球を視界に捉え、落下地点を予測し懸命に背走した。最後は右手を伸ばしてジャンピングキャッチ。捕球しなければ、同点になる危機を美技で封じた。

　「ヤギさん（青柳）が頑張ってくれていたので、守備でも好投を後押しするようなプレーができて良かった」

　序盤にもビックプレーで東京ドームをどよめかせた。二回、４番・岡本和の左中間に抜けそうな強烈な打球をダイビングキャッチ。懸命に投げ込む右腕をもり立てた。

　勝機を高めた守備力は努力と向上心で培われた産物だ。入団時から積極的に取り組んできた守備。西武に在籍していた秋山や９度のゴールデングラブ賞に輝いた中日・大島に助言を求めるなど、名手の技術を吸収。３年目の昨季には、自らもゴールデングラブ賞を手にし、守備のスペシャリストとしての証しをつかんだ。

　着実に深い谷底から抜け出そうとしているチーム。勝つために目の前の１球に全力を注ぐ。「今日は今日でリセットして、明日また勝てるようにしっかり準備をして臨みたい」と近本。外野の中心から戦況を追う選手会長が、頼もしく映った。