「阪神１－３巨人」（１７日、甲子園球場）

　３７年前を思い起こさせる弾道に心が躍った。バース、掛布、岡田のバックスクリーン３連発。あの時と同じ４月１７日、甲子園での伝統の一戦。阪神・糸井嘉男外野手（４０）が二回、バックスクリーンに先制の３号ソロ。惜しくも逆転負けを喫して連勝は「２」で止まったが、今季２度目の猛打賞をマークした超人が反攻の旗頭となる。

　中堅後方に伸びて消えた一撃に虎党は胸を躍らせた。球団史に残る伝説の日。糸井が先制の３号ソロをバックスクリーンに放り込んだ。「勝ちに飢えているから。本当に悔しいし、やっぱり勝たなアカン」。敗戦に色あせることはない。衰え知らずの超人が今季最多４万１１７５人の観衆をうならせた。

　０－０の二回１死。赤星の初球を狙い澄まして振り抜いた。３日・巨人戦で同じ新人右腕から２号２ランを放っていた背番号７。一塁ベンチに戻った後は球団広報を通じて「チームに勢いをつけることができて良かったです。勝ちたい！」といちずな思いをぶつけていた。

　４月１７日は阪神が日本一となった１９８５年、この日と同じ巨人戦でバース、掛布、岡田による伝説のバックスクリーン３連発が生まれた特別な日。糸井は出場８試合ぶりの一撃で「ＤＡＺＮバックスクリーンホームラン賞」の賞金１００万円をゲット。だが、逆転負けに表情は厳しい。

　七回は先頭で三塁内野安打をもぎ取り、九回にも先頭で新人守護神・大勢の１５５キロ直球を左前に運んだ。一発を含む３安打４打点と大活躍した開幕戦以来、今季２度目の猛打賞。連勝は２で止まったが、チーム最年長４０歳の気迫は後輩たちに伝わり、虎党の心も動かしている。

　矢野監督は「調子って、この１試合だけじゃないからさ」と言う。「嘉男（糸井）は精いっぱいやってるし。『出るところでいつもやってやろう』って気持ちでやってくれてるし」。まだまだ、戦いは始まったばかりだ。

　今年の巨人戦は４試合の出場で打率・４６７、２本塁打、５打点。プロ１９年目のベテランが宿敵に対して牙をむいている。「今、言えるのは、勝ちにつながる一本が打てるように、また頑張りますということだけです」。糸井はそう言葉を残し、前を向いた。