阪神・近本の相“棒”に迫る バット製造ヤナセ社“潜入”使うのは幹の外側、主流素材は?

 近本の相棒の秘密に迫る
 バットを形成する機械(ヤナセ社提供)
 丸棒に製材されたバット材(ヤナセ社提供)
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 野球選手にとって欠かせない商売道具の一つが「バット」。プロ野球では木製にもかかわらず、160キロ超の剛速球をはね返し、100メートル以上先に白球を運ぶ。阪神・近本光司外野手(27)、オリックス・福田周平外野手(29)が愛用する株式会社ヤナセインターナショナルに“潜入”。木製バットの特徴やこだわりについて、担当の北村氏に話を聞いた。

  ◇  ◇

 一つとして同じ物はない。1本の木を削り作り上げられる木製バット。選手の求める逸品になるまで、さまざまな困難を乗り越え、より良いバットに仕上げるために試行錯誤してきた。

 「多くの方が、木の幹の中心が強いと思っていると思います。でも、木の年輪は外側に広がっていく。そうすると、外が一番若いんですよ。その部分を人間で例えると、筋肉質の人になります。逆に中になるほど年老いた人。そうすると、バットの材として使うのは反発のいい外側になります」

 バットに使用される木の特性について語るのはヤナセ社の北村裕さん。木は自然環境の中で育つ。最も良質な材とされる北海道産のアオダモ(コバノトネリコ)は樺太から吹く冷たい風を浴びながら成長する。その結果、弾力性や反発力を備えながらも、軽くて強靱(きょうじん)な木となり多くの選手に愛されていた。ただ、天然林に依存していたこともあり枯渇。今はほとんど製造されず、木製バットの主流はメイプル素材に変わった。

 近本も同素材で主に85センチ、890グラムのトップバランス(重心が先端にある)タイプを使用してきた。バットの重さにできる材木の中で硬度が高く、耐久性も高い。MLB歴代1位となる通算762本塁打を放ったバリー・ボンズが2000年代に使用して本塁打を量産したことで有名となり、その後、プロ野球でも多くの選手が愛用するようになった。

 メイプルについて「偏西風という、ものすごく冷たい風が吹く中で育った木は、ものすごく良い木に育つ」と北村さん。米国とカナダの国境付近に連なる五大湖の水を含んだ極寒の偏西風で鍛え上げられているという。

 他にもアッシュ、バーチ、ビーチなどがあるバット材。害虫の発生や中国の伐採禁止など木製バットは何度も危機的状況を迎えてきた。今後も環境と向き合いながら、選手を支えていく。

 ◆株式会社ヤナセインターナショナル 千葉県佐倉市王子台1の6の7第2岡野ビル1F。2005年4月1日に設立。国内唯一のバット専門メーカー。原材料購入から生産、販売までを自社工場で一貫製造。公認ブランドはMLB、NPB、BFJ、WBSC。アドバイザリー契約選手はオリックス・福田周平と阪神・近本光司。

 ◆バット作りの工程

 バット作りの主な工程の流れは、(1)伐採→(2)選別→(3)製材→(4)選別→(5)乾燥→(6)荒削りと計量→(7)選別→(8)仕上げ削り→(9)研磨→(10)塗装→(11)仕上げ(最終計量など)。

 最も時間がかかるのは製材してからの乾燥。一気に乾燥させると、木材にストレスがかかって変形したり、割れたりする。1、2カ月かけてゆっくり行う。今では真空乾燥などがあり、時間を短縮できるようになった。乾燥方法の違いで異なるのは色。ナチュラル色で、真空乾燥させると木目の色がきれいに見える。

 乾燥後には、1メートルの角材にして丸棒に削る。そこからいろんな重さに仕分けていく。バットの形になったときに3000グラムの丸棒だと880グラムにはならないので、職人が選定。選んだ丸棒を指定されたバットの形や重さに仕上げる。

 最終工程は塗装で、ヤナセ社ではスプレーでバットに塗料を吹きつける。下地をつけ、次に色づけ。最後にツヤを出す仕上げ塗料を吹きつけて完成。最後に再び計量して選手の元へ運ばれる。

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