近本 吉田義男に並んだ119安打 不動の1番が連夜の打点 元祖牛若丸もエール
「阪神6-5広島」(10日、京セラドーム大阪)
一塁ベース上でベンチに向けて右拳を突き上げた。二回、同点に追いつきなおも2死一、三塁の場面。目の前のチャンスを無駄にはしなかった。今季119度目の快音を響かせ、超満員のスタンドを沸かせた阪神・近本。一時勝ち越しとなる一打で、球団新人では、1953年の吉田義男氏に並んだ。
「投手はストライクがほしい場面だったので、甘い球なら打ちにいこうと思っていた」
鋭く反応したのは、左腕・床田が投じた2球目のスライダー。捕手の構えとは逆球で、内に入ってきた一球を逃さずに捉えた。鋭い打球は一、二塁間を破り右前へ。三走・梅野が生還し、攻め時を逃さず一気に勝ち越しまで持って行った。
1年目から奮闘する若虎に大先輩はエールを送る。吉田氏は「本当によくやっています。私と同じ小さい体でひたむきに取り組む姿は頼もしい。私の記録が後輩たちに抜かれていくのは本望です。残り少ないシーズンだが、最後まで引き締めながらプレーを続け、絶対に新人王をとってくれるものと信じています」とさらなる成長に期待を寄せた。
記録に対してこだわりはないが、大先輩には大学時代に触れたことがある。フランス語を学んでいた時に調べたのが、阪神の名ショートで球団唯一の日本一へ導いた名将。「フランス代表の監督をされて、現地で野球文化を発展されたということも知りました」と、偉業に感銘を受けたこともある存在だ。
「(新人記録は)初めて聞きました。チームに貢献できるように頑張りたい」と近本は力を込めた。手にしたいのは、個人記録よりもチームの勝利。その思いが結果的に記録へとつながる。猛虎の歴史を駆け上がる近本の勢いは、まだまだ衰えない。