糸井V撃 決めた交流戦勝ち越し発進 手負いの超人「勝ちたい一心」

 「交流戦、ロッテ3-4阪神」(6日、ZOZOマリンスタジアム)

 敵に傾いた流れを一振りで引き戻した。阪神・糸井嘉男外野手(37)が、同点の延長十回1死一、二塁から、決勝の右前適時打。九回に守護神・ドリスが同点に追いつかれる嫌な展開だったが、2年ぶりの交流戦勝ち越しスタートで、貯金を今季最多タイの6とした。このまま突っ走る。

 塁上から、お祭り騒ぎのベンチに視線を送る。両手を突き上げて喜ぶが、笑みは見せない。対照的な表情が、この試合、この1打席に懸ける思いを映した。延長十回、今季6度目の決勝打。今季7度目の延長戦に終止符を打ったのは、手負いの出場が続く糸井の覚悟だった。

 あと1アウトから同点打を浴び、それでもしのいで迎えた十回。糸井に打順が巡った。対するはロッテの守護神・益田。1死から近本、糸原の連打で作った好機。3ボールになっても集中力は途切れない。1球見送り、続く5球目。内寄り低めの148キロを見逃さない。

 「チャンスをものにしようと。勝ちたい一心で振り抜きました」

 鋭い打球が一、二塁間を抜けると、二走・近本が一気に勝ち越しのホームに生還した。出場6試合連続安打、3試合連続打点。コンディション不良で、1日の広島戦(マツダ)を欠場するなど万全な状態ではない中、3試合連続のDH出場でチームを勝利に導いた。

 4日のカード初戦。大腸がんを克服し、復帰即タイムリーを放った原口に「感動した」と心を奮わせた。翌2戦目、3戦目は一人、チームより早く球場に。バットを振り込んだ。手負いでも、敵地でも、黙々と練習を重ねる日々が37歳の背中を支える。「よかった、よかったね」。「超人」の異名は、猛練習で手にした称号でもある。

 2月のキャンプ中。練習試合が行われた宜野座球場で、古巣・日本ハムの吉村GMに会った。「実はコンバートを考えている選手がいるんだ。何が一番、必要だ?」。糸井も入団3年目の4月、打者に転向した。「投手では使えない」-そんな屈辱的な一言からのスタートだった。伝えたのは「覚悟」だった。

 「一番は未練を完全に断ち切ること。打者で生きるんだ、という覚悟ですかね。それさえあれば、あとは僕に任せてください」

 プロ6年目の今季に打者転向を決めた日本ハム・白村に、熱い言葉でエールを伝えた。厳しいプロの世界で生き抜くため、バット1本に全てを懸けてきた野球人生だ。勝利を、優勝を渇望する移籍3年目。満身創痍(そうい)の体で、グラウンドに立つ理由がここにある。「一戦必勝で、一緒に戦っていきましょう」。再び3差で首位・広島の背中を追う。頂点への活路を開くのは、超人のフルスイングだ。

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