能見激白!引退した城島さん、藤井さんのために優勝したい
阪神の能見篤史投手(38)が19日、デイリースポーツのインタビューに応じ、優勝への特別な思いを語った。チームで出場選手登録されている投手では最年長。ベテランと呼ばれる年齢になった今、「いろんな人の無念を見てきた」と責任を口にする。2位に付けるチームは23日から首位・広島との3連戦。発展途上の若手を支え、リーグ戦再開後もキーマンとして戦う。
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-ここまで11試合に登板して、2勝3敗の防御率2・71。
「昨年よりは全然球の質がいいし、高さもいいと思います。球の質的に好不調の波は少ないかな、という思いはありますね」
-金本監督も「全盛期に戻った」と言う。
「それはないです(笑)。ただ、体の使い方であったりとか、いいイメージで投げられているというのはあります。打者の反応もそれなりに良くて、ファウルになったりというのも多い。打者が考えてくれているというのもあるのでね」
-昨季終盤、中継ぎで2試合に登板。リリーフ転向の可能性もあった中で、金本監督が先発起用を決めた。やりがいを感じる部分は。
「そうですね、それはあります。現役も一緒にやらせてもらっているし。一緒に現役をやらせてもらったコーチの方も多いですから。親しみと言ったら言葉的に良くないかもしれないですけど。身近な存在というか、距離が近いので。勝ちたい思いはさらに強くなりますし、配慮を感じる部分が多いです」
-優勝への思いは年々強くなっている。
「もちろんね、できる年数もそんなに長いわけではないですし。いろんな人の無念を見てきていますし」
-2005年の優勝を経験している。
「ほぼほぼ投げてないですし。全然違いますよね。優勝した喜びはもちろんありますけど、その輪には入っていけなかったので。素直に喜べる自分はいなかったですね」
-個人としては、まだ優勝を経験していないという思いか。
「中心として動いて優勝できたら、一番いいですよね。もちろん今、狙える位置にありますしね。05年以降も優勝するチャンスはあった。でも、できなかった事実がある。その中で、辞めていかれた選手がたくさんいたわけですからね」
-その思いを背負って戦う、ということ。
「もちろんね、そういう人をたくさん見てきましたから。ジョーさん(城島)もそうだし、藤井さん(現2軍育成コーチ)もそう。チャンスは絶対にあったわけですから。優勝してくれよと言われたというか、優勝したいと思っていますよ」
-シーズン残り79試合。今後の戦い方は。
「個人としてはしっかり抑えていくことが大事。昨年と比べたら、防御率も全然違うので。その分、点を取られていないわけですから。個人の数字は特にないですけど。防御率を低く、低くというのは必要なことだと思います。安定していないと、そういう数字が出てこない。規定(投球回)にも、もちろんいきたいですけどね。チームが勝ってくれたら、非常にありがたいです。ヒーヒー言いながらやってます(笑)」
-38歳シーズン。体力的にも調整が難しい中で安定感が光る。
「そこはうまく香田(投手)コーチが代えてくれているというか。なるべく疲れを蓄積させないように、と。そんなに長い回を投げてないですし。香田さんが配慮というか、うまくスパッと代えてくれているので」
-今年は特に、抑えながら勝敗が付かない場面で思い切った継投が目に付く。心境は。
「基本的に何を重点に置くのか。チームが勝つために動くわけで。もちろんリリーフの方は「もう少し投げてくれよ」と思うかもしれないけど、勝つ確率を考えると無理に引っ張って打たれるのが一番良くないので」
-投げたいと思う気持ちと、チームを思う気持ち。ここ数年で気持ちの変化がある。
「いや全然。代えてくれても全く問題ないです。個人で動いているわけじゃないので。点差が開いていたら全然(投げる)。最終的に勝つためにどうするかなので。香田さんもいろいろ話をしてくれますからね」
-昨季は初めてトレーニングでスクワットを導入した。今季新たに取り入れたものは。
「なるべく疲れをためないことですね。残さないというか、登板に向けて疲れを取ることを意識しています。今年は特に心掛けています。そんな長い回を投げないですし、そこまで力があるわけではないので。メリハリは昨年以上に付けています。その分、置く重点の中で、球の好不調が少なくなっているというのはあります」
-初回から全力を出すイメージなのか。
「とにかく点を取られないように、という感じですね」
-登板間のブルペンも入らないことが多い。メリハリの一つか。
「1週間しか空かない中で、感覚はあまり関係ない。特に、ここまで投げられてきているというのもあります。考え方は一緒。リリーフも1週間空いて投げることがある。だから変わらない。気持ちの持ちようです。この年になったから思えることでもある。うまくいってるかどうかは分からないですけど」
-チームは広島に次ぐ2位。好調の要因は。
「好調ではない。勝っているから好調に見えるでしょうけど。好調な戦い方ではないです。ただ、それでも勝てていることは大きい。リリーフが頑張ってくれているというのもありますし」
-昨年にはない雰囲気なのか。
「ない、っていうのもないですけど。うまくハマっているな、という感じ。やっている側からすればですね。チームの流れとして、いい方向なのは間違いない。基本的には投手が抑えて勝っていくというのが大前提。投手が踏ん張っていけば、チャンスが巡ってくると思うので」
-チームの雰囲気はどう感じる。
「たまにしかベンチにも入らないのでね。でも、少ないチャンスを頑張ってものにしようというのも伝わってきますよね」
-矢野、城島、藤井ら先輩捕手と過ごしてきた経験を今、梅野に伝えている段階か。
「今はまだ必死な段階。一生懸命やっていますよ。これから苦労することの方が多いと思う。誰でも最初はできるんですよ。プロには選ばれし者が入ってきているわけですから。力は誰でもある。そこからですよ。何年もする大変さを分からないといけない」
-能見選手自身、09年が分岐点となった。
「そうですね。09年に規定投球回に到達して。やっとスタートラインに立てた。そこから続ける大変さもね。3年はやらないといけないです」
-守り勝つ野球の中で、藤浪が2軍にいる。これまでも言葉を投げ掛けてきたが、苦しんでいる後輩を見て、どう感じているのか。
「いいと思いますよ。当然、いろんな人が助けてくれる。必要な人間やし、戦力です。でも、それに頼ったら成長はない。これだけは言えますね。本人が変わらなければ、何も変わらないので」
-悩むことも必要。
「本人がどう思うかですよね。僕から言葉を掛けることもない。自分で感じてやらないとダメ。成長しない。言われてできるなら誰でもするでしょ」
-ただ、必要戦力に違いはない。
「もちろん、そうですよ。本音で言えばこっちとしては、早く帰ってきてほしい。それはもちろんだけど、本人のためにもそうだし、この1年で終わるわけじゃない。彼の野球人生は長いから」
-能見選手自身も苦しんだ経験が、今の思いになっている。
「そうですね。いろんな人にアドバイスをもらって、苦しんでやったこともある。でも、やってもうまくいかない。最初だけ。うまくいかないところから、新たに取り入れてやっていくと、うまくいったように錯覚してしまう。続かないんですよ、それが。僕もそうでした。この感じいいな…って投げたけど、ちょっと投げていくとダメになる。もちろん、言われて変わることができる人もいる。でも、僕は自分で気付くことが、一番じゃないかなと思います」
(続けて)
「秋山でもそうでしょ。ずっと悩んで、悩んで。球の質も全然変わらなくて。でも、2軍では完璧に抑えていた。それが一つのきっかけで、ここまで変われるんですから。下積みが長かった人間が、何かをつかんだきっかけで変わることができると、続いている傾向ってすごくありますよね。崩れないですからね。ただ、答えがないものなので。本人がどう感じるかです」