迷えるゴメスよ 四球を愛しなさい…

 金本知憲はマウロ・ゴメスにこんなアドバイスを送ったことがある。

 「日本の投手は追い込んでからはボールゾーンにしか投げてこない。投げてくるとすれば投げ損ないか意表をつきたいかのどちらか。打ちたい気持ちが強ければ、ボールゾーンを追い掛けてしまう。だから彼に言いたい。俺の場合、精神的な作戦として、フォアボールを好きになろうとしたけど、どうだろう?彼にもお薦めするよ」

 和田前監督時代の14年シーズン、ドミニカ共和国からやってきた新助っ人は春先から広島のブラッド・エルドレッドと競うように三振の山を築いていた。当時、金本はデイリースポーツ評論家としてゴメスのウイークポイントを論じ、紙面を通じて“もっと四球を愛しなさい”と語った。

 僕が金本の言葉を伝えると、ゴメスは「ボール球を打とうとしているわけではないけど、分かっていても振ってしまうのは僕の技術のなさ。フォアボールを好きに??なるほど、いいアイデアだね」とウインクしていたのだが…。あれから2年、ゴメスは今、四球を愛せず苦しんでいる。

 18日まで出場3試合で7打席連続三振を喫し、来日3年目にして初めて代打を送られる屈辱も味わった。19日・ソフトバンク戦を欠場し、この夜もベンチスタート。出番は八回代打で巡ったが、結果は外角高めのボール球をたたいて、中飛。金本は交流戦後半のゴメスの精神状態を「パニックになっている」と評し、スタメンから外した理由を「迷いを掃除する意味でのリフレッシュ」と説明した。

 ちなみに金本は現役時代、相当四球を愛せる男だった。プロ通算1368四球は、王貞治、落合博満に次ぐプロ野球歴代3位の数字。3000安打目前のイチローも日米通算1000四球まであと4。敬遠も含め「選球」は一流の証明である。

 助っ人だから勝負を決める一発にこだわりたい。四球を量産するために日本に来たんじゃない。そんな思いもあるだろう。だが、ゴメスの課題は来日以来、変わらない。同じような軌道、外に沈むボール球を追い掛け、敵陣の術中にはまる。

 「日本の投手の傾向は肌で感じている。2ストライクに限らず、1ストライクからもストライクを投げてくれなかったりする。カギはボール球を振らないこと。シンプルなことなんだけど…」。ドミニカンはそう言って、頭をかく。実はゴメスの三振の多さを懸念して、獲得調査を打ち切った日本の球団がある。そのチームは今、快調に首位を走っている。交流戦明け、マツダスタジアムでおそらく先発オーダーに復帰する背番号5の「選球」が後半戦の鍵を握る。

     =敬称略=(阪神担当キャップ・吉田 風)

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