岩貞 故郷熊本に届け!気迫の7回0封
「中日4-3阪神」(16日、ナゴヤドーム)
勝たせてやりたかった。先発した阪神・岩貞祐太投手(24)が、7回を4安打10奪三振無失点の好投。だが、リリーフ陣がつかまり、今季2勝目を逃した。故郷・熊本で地震が発生し、平常心を保つことが難しかった中で、左腕は見事に存在感を示した。
複雑な思いをグッとこらえた。まさかのサヨナラ負けを喫した試合後。熊本出身の岩貞が、沈痛な面持ちで、素直な心境を語った。
「試合直前まで心配でうまく集中できませんでした。でも必死に守ってくれる守備陣と一生懸命リードしてくれるキャッチャーがいるので、自分も全力でいかないと、失礼にあたると思いました」
14日夜に地元熊本で地震が発生した。家族の安否は確認できたが心配事は尽きない。甚大な被害を受けた益城町に住む親類は避難生活を強いられている。翌15日から16日も大きな揺れは続いており、「朝から携帯で連絡したり、連絡をもらったりして大丈夫か確認をとっていた」という。
試合に向かうには難しい心理状態も、マウンドに上がれば投球に集中した。初回を三者凡退に抑えると、華麗な投球を展開。ピンチでは両拳を握り、気迫を込めた。阪神戦で4戦連続本塁打中だったビシエドも3打数無安打2三振。最速148キロの直球、カットボール、チェンジアップできりきり舞いにさせ、「一番こわいバッターなので、3タコにできたのは大きいと思います」と自信につなげた。
7回4安打無失点。毎回10奪三振で、シーズン34奪三振。再びリーグトップに返り咲いた。3試合連続2桁奪三振は江夏、井川、能見、藤浪に次いで球団史上5人目の快挙。防御率0・83もリーグ2位だ。プロ3年目で覚醒の予感すら漂う。
金本監督も「かわいそうだったね。勝ちがね、2回連続でね。でも見てて気持ちよかったしね」と左腕の心情を気遣い、3試合連続の好投を称えた。
八回途中で降板した前回に続いて白星がスルリと逃げたが、岩貞の気持ちは折れていない。「何とか勝ちたかったけど、切り替えて次のゲームにいきたい」。困難な現実と向き合い、左腕は懸命に前を向いた。
関連ニュース





