渡辺、若手に求める「考える力」
「元虎戦士新たな旅立ち 神機一転」
今オフ、11選手が阪神を退団した。新たな人生へチャレンジする虎戦士の思いをお伝えする。
リリーフ一筋の10年間だった。渡辺亮投手(33)の通算362試合のマウンドは全て中継ぎ。あらゆる状況で渡辺は投げ続けた。プロ2年目の2007年から12年までは6年連続で40試合以上に登板。175センチ、68キロと大きくはない体だが、全力で駆け抜けた。「自分の中ではやりきりましたね」。未練は全くない。
そんな渡辺には、どうしても忘れられない試合がある。3年目の08年7月27日の中日戦(甲子園)。渡辺は1-0で迎えた六回に2番手としてマウンドに上がった。
この試合の先発は来季から投手コーチに就任する金村暁。日本ハムから阪神に移籍後、まだ勝利がなかった。渡辺が六回を無失点に抑え、残りのイニングは盤石だった「JFK」で逃げ切るという算段だったが…。結果は2/3回を5安打6失点。勝ち星を奪ってしまった。
「何とか、金村さんに白星を付けたかったんですけどね。申し訳なかったです。自分にも腹が立ちました。金村さんは『気にするな』と言ってくれましたけどね…」
リベンジの場はすぐに与えられた。翌28日のヤクルト戦(神宮)でも登板し、1回を無安打無失点。真っさらな気持ちで、相手打線に立ち向かったことが奏功した。
「それまでは(失敗を)引きずりやすいタイプでしたけど(抑えたことで)楽になりました」とターニングポイントになった試合だと振り返る。この年はキャリアハイとなる66試合に登板。防御率2・67をマークし、プロでやっていく自信を付けた1年だった。
10月1日の引退会見から、間もなく3カ月がたつ。会見で「もっともっと若い選手が出てきてほしいなと思います」とハッパをかけたように、若虎の台頭を待ち望んでいる。
常に追いかけてきた「JFK」の一員で今オフ、阪神復帰を果たした藤川は、ベテランとの合同練習で何を吸収したいのか考えるよう若手に求める。渡辺も同じ思いだ。練習の意図や目的を理解しなければ、自分の身につかないからだ。
「何が足らないのか考えないと。社会人なんやからね」
来季からは球団本部プロスカウトに転身する。献身的にチームに貢献できる選手の発掘を目指す。
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