狩野が代打千金打!待望の貯金生活や

 「交流戦、阪神4-1日本ハム」(7日、甲子園)

 神様の代役が万感の思いを込めた一打を放った。2-1の六回2死一、二塁、阪神の代打・狩野恵輔外野手(32)が、初球を左前にはじき返し、試合の行方を決定付ける3点目のタイムリー。好投していた先発・能見篤史投手(36)に代打を送り、勝負をかけた和田豊監督(52)の起用に見事に応えた。チームは今季3度目の4連勝で、初の2カード連続勝ち越し。そして、4月6日以来の貯金1。猛虎よ、このまま突っ走れ!

 狩野がこん身の一振りを天国にささげた。

 「おばあちゃんのために…あの日から、そんな思いはどこかにあったと思います」

 出番は1点リードの六回2死。1失点と力投を続ける能見の代打だった。走者を一、二塁に置いて吉川の初球、内寄りのスライダーを左前に運んだ。前カードのロッテ戦で連日喫した終盤の悪夢を考えれば、是が非でも欲しかった追加点。切り札の関本が故障離脱する中で、神様の代役が値千金の「1」をスコアボードに刻み込んだ。

 「きょうは本当は能見さんでした。能見さんの気遣いで譲ってもらいました」。試合後、ベンチ裏の通路で開口一番、エースの粋な計らいに感謝した。インタビュアーにお立ち台からの景色を聞かれると、「やっぱりいいですね」。マートンと並んだヒーローマイクは努めて冷静に言葉を選んだ。胸の内をグッとのみ込むように…。

 5月16日午後3時、父方の祖母・ハマ子さんが肺炎のため96歳で永眠した。名古屋遠征中、悲報を聞いた狩野は17日の試合後チームを離れ、列車を乗り継いで群馬の実家へ帰った。昨秋から入院中だった病院で亡きがらと対面すると、あふれる涙がほおをつたった。「うちは両親が共働きで、おばあちゃんに育ててもらったから…」

 野球の「や」の字も言われたことがない。プロに入ってからも掛けられる言葉は「頑張ってるね」のひと言。年に一度、正月に帰省すると、関西に戻る孫を見送る祖母の目はいつも真っ赤だった。玄関先で「また一年間会えないんだねって必ず泣いていたな」。葬儀ではあえて棺(ひつぎ)に何も入れなかった。火葬場で遺骨になったおばあちゃんに誓った。「頑張るから…」

 プロ15年目の32歳がエースに4勝目を運んだ。「能見の代打だけに大きかった」。和田監督は「貯金1」の立役者に賛辞を惜しまなかった。かつて同じマンションに住んでいた左腕の登板試合は今季7打数4安打。通算でも打率・321とめっぽう強い。「けが人も多いけど、皆でカバーして頑張っていきたい」。曇り空の上にはせた狩野の思いが虎の連勝を4に伸ばした。

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