狩野、トラウマ払拭打に込めた恩返し

 阪神・狩野恵輔外野手(31)が1日、西宮市内でデイリースポーツに胸の内を語った。今季初昇格した8月29日のヤクルト戦(甲子園)で即スタメン出場。本塁打を含む3安打4打点の活躍で、前カード巨人戦で負け越したチームの失速を食い止めた。1年前のトラウマを払拭(ふっしょく)する一打には、和田監督への恩返しの気持ちがこもっていた。

 狩野は甲子園にほど近い線路沿いを歩きながら、1年前の「悪い夢」を述懐した。このまま野球人生を閉じたくない。その一心で、幕引きと隣り合わせの時間を過ごしてきた。

 「あの夜、家に帰ってテレビをつけたら監督が唇をかんで悔しそうにしている映像が流れたんですよ。それから何度もゲッツーの場面がよみがえってきて…。悔しかった」

 昨年9月10日の中日戦は九回で決着がつかず、延長十二回までもつれこんだ。2‐2の最終回、1死一、二塁。途中出場の狩野にサヨナラのチャンスが巡ったが、遊ゴロ併殺…。翌日、出場選手登録を抹消され、それ以降、1軍から声が掛かることはなかった。

 「ファームでもランナーが一塁にいるとトラウマになっていた。このまま野球人生を終えると、あのゲッツーが現役最後の打席になってしまう。もう一度、1軍でやることしか考えていなかったし、絶対に打ちたかった。今回は監督が拳を握って喜んでくれていたので良かった。大事な試合でスタメンで使ってもらったこと、これは本当に首脳陣に感謝しています」

 腰痛の新井良に代わり、8月29日に出場選手登録された。即スタメンで2年ぶりの本塁打を含む3安打4打点。前カード巨人戦の負け越しで漂いかけた暗雲を拭い、自らも1年越しの呪縛を解いた。

 06年オフ、金本知憲の通う広島のジム「アスリート」に入門し、神戸‐広島を自費で十数往復。鍛錬を経て07年のブレークを迎える。プロ初安打初打点が巨人戦のサヨナラ打…鮮烈なシーンは、あれから7年たった今も虎党の心に生きている。

 「1軍はいいなと思いましたし、声援はうれしかった。今回はラストチャンスだと思って行きましたけど、だからと言って必要以上に自分を追い込むことなく、戦力になろうという気持ちでした。14年間やらせてもらって、強い阪神も弱い阪神も見ています。今、自分自身で思うのは試合に出ても出なくても、どんなことでも貢献できる選手がチームには必要なんだということ。劣勢でも声を出して盛り上げること、集中力を切らさないようにすることもそう。小さなプレーだって、流れを変えることもできる。出たときは絶対に活躍したいし、出ないときも貢献できる選手でありたい。勝ちたい思いが強いんです」

 野手休日のこの日、狩野は1人で鳴尾浜球場へ出向いた。体調のメンテナンスを怠らず、来るべき出番に備える。遅れてきた救世主は、まだ31歳。輝きを放つのはこれからだ。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

阪神最新ニュース

もっとみる

    スコア速報

    主要ニュース

    ランキング(阪神)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス