大和人生初サヨナラ!両親の前で決めた

 「阪神4-3広島」(29日、甲子園)

 やってくれた。阪神・大和内野手(25)が、人生初のサヨナラ打でチームを3連勝に導いた。故郷の鹿児島県鹿屋市から応援ツアーで駆けつけた両親らが見守る中、同点の九回2死一、二塁で、殊勲の左越え二塁打を放った。今季7度目、6月4度目のサヨナラ勝ちで、首位・巨人にも1・5ゲーム差に再接近だ。

 最高の結末はあらかじめ決められていた。故郷を愛する男が、地元応援団の前で放った人生初のサヨナラ打‐。そんな心温まるストーリーが、一振りで現実へと変わった。見えない“何か”に押された大和の打球は、痛烈に左翼・ルイスの頭上を越えていった。

 芝生に弾む白球が目に飛び込むと、寡黙な男がド派手なガッツポーズを繰り返した。二塁手前で始まった歓喜のウオーターシャワー、そして応援団がいる一塁アルプス最上段へ全員で指さしポーズ。まるでドラマを見ているようなエンディングは、同点の九回、2死一、二塁から始まった。

 「決めてやろうという意識もなかった。とにかくつなぐことだけ」と大和。カウント1‐1からの3球目、内角直球に小さな体が鋭く反応した。きれいな軸回転ではじき返した打球は、前進守備の左翼頭上を力強く越えていった。

 「初めてじゃないですかね。こんなうれしいことはないです」。プロ初どころか、人生初のサヨナラヒット。お立ち台でははにかみながら「やっちゃいましたね」と喜びをかみしめた。1点を追う五回1死一、三塁の場面では一塁へセーフティースクイズ(内野安打)を成功し、七回にも左前打。1日以来の猛打賞、1人で試合を決める奮闘に「変な感じですね」と首をかしげる。

 その理由は一塁側アルプス最上段に陣取った両親を含む約70人の応援団。この日、地元・鹿児島県鹿屋市からフェリーで甲子園に駆けつけた。練習中からバックネット裏で声援を送り、感謝の言葉を口にしていた大和。故郷を大切にする思いは、自身がゲームで使うバットに隠されている。

 4月下旬、グリップエンドにあるシールを貼った。それはおよそ野球に似つかないバラのシールだった。「鹿屋はバラの町なんですよ。地元への思いを込めて」。そう照れくさそうに明かした愚直な男。交流戦中は不振にあえぎ、涙を流したこともあった。

 地元の期待、その期待に応えなければならない責任感。故郷を愛する男だからこそ、悔しさが胸をついた。そしてこの日はチカラに変えてみせた。「良い姿を見せられて良かったです」と聖地でスポットライトを浴びた大和。それが野球の神様がくれたご褒美だったとしても、何ら不思議ではない。

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