Wスチール成功させた大和の洞察力
プレーの裏側に迫る「猛虎の深想」‐。今回は今季初の3連敗で迎えた18日のソフトバンク戦で、初回に成功させた大和、鳥谷のダブルスチールに焦点を当てます。チームに勢いをつけ、初回に一挙5得点のビッグイニングにつながった好走塁。成功へ結びつけた要因には、大和の鋭い“洞察力”があった。
今季初の3連敗で迎えたソフトバンク戦。初回、西岡の先頭打者アーチで交流戦に入って初めて先取点を奪った。さらに続く大和が右前打で出塁。鳥谷の投ゴロを摂津が二塁へ悪送球し無死一、二塁とチャンスが広がったところで、ベンチは大和にサインを送る。
グリーンライト‐。走れるなら走って良いという指示だ。打席には4番・マートン。初球から大和はスタートのタイミングを計っていた。
大和「試合前のミーティングで摂津さんの話があって、塁に出てそれを確認して。やっぱり自分のミスで広げたピンチだったので、(摂津の意識は)打者中心になっていたんだと思います。こちらをケアするそぶりもあまりなかったので」
2球目、3球目と進んでいくに連れ、摂津は二塁をけん制するような動きを見せなかった。投球動作はすべて一定‐。二遊間の選手も走者を引きつけるような様子はなかった。そこで大和は「1歩、1歩、歩きながらという感じ」で投球ごとに少しずつリードを広げて行った。
自分が犯したミスは、打者を打ち取って取り返したいという投手心理。摂津も“変化”に気づく余裕はなかった。成功確率を着実に高めて迎えたフルカウントからの6球目。ベンチのサインが「GO」へ切り替わる。
吉竹作戦・守備走塁コーチ「連敗中だったし、動けるところは動く。最悪は併殺打。打って併殺になるんだったら、走って併殺でも変わらない。スタートを切ることで守る方は嫌だし、打者にとってはヒットゾーンが広がる。そういう思い切ったことをやっていいと思うしね」
ここで摂津は初めて、二塁へ擬投するそぶりを見せたが、けん制球を入れたわけではなかった。セットポジションに入り、足が上がる直前に大和がスタート。マートンは低めの変化球で空振り三振に倒れ、細川は素早く三塁へストライク送球。それでも完全に大和の足が勝った。悠々、セーフのタイミングで今季初の重盗を成功させた。
大和「フルカウントになって実際にサインが出たので。これで思い切って行こうと」
直後、新井が四球で歩き、良太の満塁弾が飛び出した。一挙、5点のビッグイニング。西岡が生み出した流れを、大和の鋭い洞察力が加速させた。苦しい戦いを強いられるのが連敗中。積極策を取ったベンチに、選手が高次元の準備と結果で応えたプレー。今季の快進撃を象徴する“強さ”が、ここにある。
