藤浪歴史刻んだ!虎高卒新人聖地最速星

 「阪神4-0DeNA」(14日、甲子園)

 この男にはやっぱり聖地がよく似合う。阪神のドラフト1位・藤浪晋太郎投手(19)=大阪桐蔭=が甲子園初登板。最速152キロの直球を軸に、6回無失点でプロ初勝利を挙げた。今季の高卒新人では一番乗り。虎の高卒新人では甲子園最速勝利となった。高校時代から負け知らずの聖地で、新たな歴史が幕を開けた。

 少し照れながら、高々とウイニングボールを掲げた。今季最多4万5197人の甲子園。「藤浪コール」が背番号19に注がれる。高校時代、無敗を誇った聖地から“晋太郎伝説”が幕を開けた。藤浪が甲子園初登板初勝利。高卒新人では球団史上、最速の甲子園勝利を挙げた。

 「素直にうれしいですし、甲子園で初勝利を挙げることができて、良かったと思います」

 最速152キロの直球で、強力DeNA打線に真っ向勝負を挑んだ。唯一のピンチは勝利投手の権利がかかった五回だ。2死から高城に四球、三浦に左前打を浴びて一、二塁。初めて得点圏に走者を背負った。

 「ピンチだったので、気持ちをしっかり入れて投げました」。石川を148キロ直球で左飛に抑え、ピンチを切り抜けた。

 バットでも魅せた。五回1死一、三塁の好機で迎えた第2打席。プロ初打点となるセーフティースクイズを決め、貴重な追加点を挙げた。「たまたまいいところに転がってくれました」。ナインとのハイタッチに自然と笑みがこぼれた。

 高いレベルで野球がしたい‐。自ら決めた高校からのプロ入り。尊敬する父・晋さんは大学進学を勧めたが、自分の意思を貫いた。これまでもそうだった。高校進学も周囲が他校を推す中、強豪・大阪桐蔭を選んだ。

 スマートフォンには“進化の軌跡”が記録されている。高校3年間の投球を収めたダイジェスト映像集だ。「昔はこんなんだったんですよ」。ただ、がむしゃらに腕を振って投げていた高1の秋。入学当初、投球フォームはバラバラだった。卒業後すぐにプロへ進めると思う人は少なかった。だが、ライバルと切磋琢磨(せっさたくま)することで甲子園優勝投手までのし上がった。

 公式戦3度目のマウンドは6回5安打無失点、4奪三振。制球も安定し、四球は1つ。課題のクイックモーションにも進歩の跡を見せた。「そんなに簡単に勝てるとは思っていなかったので」。手探りだったオープン戦から、手応えを得た公式戦初登板。少しずつプロの壁を乗り越えている。

 進んだ道は正しかったのか。「まだまだ、これから。これからそういうことを実感していくのだと思います」。阪神のエース、球界の大エースへと続く道はまだ始まったばかり。その先にきっと答えが見つかるはずだ。

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