【惨敗の裏側・上】存在した意識のズレ

 「ザックJAPAN惨敗の裏側・上」

 サッカー日本代表のW杯ブラジル大会は1分け2敗の1次リーグ敗退で終了した。アルベルト・ザッケローニ監督が10年8月30日に日本代表監督に就任して以来、「日本らしいサッカーの確立」を目指してきたはずが、W杯本大会では力を出し切れずに惨敗した。日本代表は何を目指し、どこで失敗したのか。4年間の足跡をたどり、敗因を分析する。

  ◇  ◇

 最後に代表に加わった大久保は、パス回しにこだわる攻撃に違和感を覚えていた。「日本の良さが出るのはショートカウンター(前線でのボール奪取から素早く攻める戦術)。日本がポゼッション(パス中心の戦術)をやろうとしてスカッと勝った試合というのは、多分4年間で1回もなかったと思うんです」

 もともと監督と選手の間には戦術上の理想にズレがあった。監督は一つのサイドを徹底的に攻め抜くやり方を好んだ。本田ら攻撃の中心選手はサイドチェンジを用いた、パスを多くつなぐ戦術を磨きたかった。

 昨年10月の東欧遠征では本田が長谷部を伴い、監督に「つなぐサッカーをやりたい」と直訴した。本田が「本気で言いたいことを言えた最後」と振り返るほどの激論だった。監督もこの意見の一部を受け入れ、選手の自主性を尊重した。

 こうした“闘争”の末に勝ち取った「自分たちのサッカー」に、攻撃陣は強い自負心を持っていた。だが初戦のコートジボワール戦では5、6人が前線で張る相手の攻撃に、攻撃の軸である左サイドの香川、長友が守勢に回らされ、自分たちのサッカーを出すことすらできなかった。

 それでも自分たちのサッカーを出せれば世界で戦える、という思いは消えなかった。対照的にコートジボワール戦後、DF内田は「W杯は勝つのが目標なのか、自分たちのサッカーをすればOKなのか、じゃないですか?(自分の意見は)秘密」と複雑な思いを口にした。そもそも本田らが監督と直談判したこともチームの総意とは違った。

 理想に縛られた選手と、現実的な見方をしていた選手。監督の采配以前に、選手間の意識にズレがあった。

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