J2熊本再出発 限界超えて戦った

 横断幕を手にスタジアムを一周する熊本イレブン  
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 「J2、熊本-千葉」(15日、フクダ電子アリーナ)

 熊本地震の影響でリーグ5試合が中止となったJ2熊本が4月9日以来となるリーグ戦に臨み、千葉に0-2で敗れたものの、復興への大きな一歩を踏み出した。元日本代表FW巻誠一郎(35)は試合後、涙を流しながら「熊本も僕らもここからが大事。力強く一歩を踏み出せるよう、チーム一丸、熊本一丸で前に進んでいきたい」と語った。

 何度も倒された。何度も阻まれた。それでも進む、前へ、前へ。1カ月ぶりの公式戦は0-2の完敗。試合後、大粒の涙を流したFW巻から素直な言葉が漏れる。「正直、勝ち点3…、いや勝ち点1でも熊本の皆さんに届けたかった。無力感、悔しさがある」。地元の思いを背負ったプロ集団だからこそ、本気で勝ちたかった。

 熊本地震発生後、約2週間、全体練習ができず、今月2日から活動を再開したものの、90分間の実戦形式は一度もできなかった。だが巻は言う。「後半は苦しくて何度も足が止まりそうになった。何度もゴールへと向かうことを辞めようと思った。ただ熊本では家がなくなったり、本当に苦しい思いをしている人がいる。僕らの苦しみは小さなもの。そんな思いが僕らの足を動かした」。選手全員が限界を超えてなお、愚直に走り続けた。

 試合前には両チームで黙とうをささげ、腕に喪章を着けてプレーした。試合後は熊本の選手たちが支援への感謝を伝える横断幕を持ってピッチを一周。スタジアム一体となって復興へのエールが送られると、選手の目には涙が浮かんだ。

 苦しむ人々の力になれると信じている。巻は「最初はサッカーをやってはいけないんじゃないかと思った」という。しかし、MF清武が「避難所を回っていても、おばあちゃんから『試合頑張ってね』と声をかけられる」と語るように、熊本イレブンは勇気を与えられる存在でもある。

 今でも全体練習後には避難所回りや、子供たちのためのサッカー教室などを行っている。親からは「選手が来てくれると子供も笑顔になる。そんな姿を見ると、親も笑顔になれる」という言葉が聞かれた。人と人とのつながりが、復興を目指す地元と寄り添う熊本の原動力となっている。

 「最後まで、どんなに苦しくても前に進み続けた。胸を張って、一度熊本に帰って、次の試合に向けて準備をしたい」。再出発はゴールではない。感謝と誇りと使命感を胸に、熊本のために走り続ける。何度でも。

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