珍リングネーム「香美の子岡村ケントキッド」が警察官へ転身 「夢は白バイ隊員」

 珍リングネームの宝庫で知られる六島ジムから、警察官へと転身を決めたボクサーがいる。香美の子岡村ケントキッド(26)=本名・岡村賢人=が26日、現役を引退し、10月1日から京都府警に勤めることを発表した。

 「プロで4年間頑張って、昨年の西日本新人王で決勝まで進むことができた。体力、減量で鍛えた精神力に護身術もある。ボクサーとしての経験を一番見てくれるのが警察官だと思った。これからは、市民の安全のために貢献したい」。鍛えた拳で日本のために貢献する誓いを述べた。

 171センチ、54キロの細身の体で格闘経験はなし。頭脳は優秀だった。兵庫県香美町出身で、村岡高では野球少年。高3夏の県大会は1番センターで先発し、「もちろん1回戦負け」で終わった。

 手堅い仕事に就こうと公務員を志望。高校卒業後は「住んでみたかったから」と京都で2年間、専門学校に通った。20歳時、大阪府警、海上自衛隊、香美町の広域消防署と試験はパス。さあ念願かなったと思いきや、ここで迷いが生じた。

 「ボクシングをやってみたい」と思いがふつふつ沸いてきた。京都のジムに体験入学したがプロへは踏み出せない。1年間、もやもやしてる時、パチンコ店のアルバイトで運命的な出会いがあった。

 現六島ジム・武市晃輔トレーナーが当時、同店に勤めており、香美の子は「明らかにオーラが出てた」と直感。あいさつ程度しか関わりのなかった同トレーナーに「ボクシングやられてるんですか?」と話しかけた。

 そこからは“ストーカー”。京都のジムに同トレーナーのいる日を狙って1日会員になった。そして六島ジムのチーフに就任したことを聞くと、「プロになりたいんです」と、ついに決断した。

 「どう見てもプロになれん。遊びと違うぞ」とダメ出しされたが、食い下がって入門。生来の真面目さで、予想を裏切り成長した。

 香美町を盛り上げる使命を背負ってきた。デビュー前、枝川孝会長から命名された時は「何てかっこいいんだ」と即決。試合でリング入場時は香美町をPRするプロモーションビデオを流し、ローカルヒーロー「香美超戦隊オジレンジャーGEO」が援軍に駆け付けたこともある。

 「地元に帰れば近所のおじいちゃん、おばあちゃんが『頑張ってるなあ』と言ってくれる。僕が香美町に支えられてきた」と、故郷には感謝しかない。

 「香美の子」は「神の子」だった。デビューから8戦負けなし。ダウンしても不思議と盛り返した。しかし昨年9月の西日本新人王ライトフライ決勝戦で1回2分42秒KO負け。枝川会長は「正体がばれた」と言い、限界は明らかだった。

 9戦5勝(2KO)1敗3分け。故郷の両親のためにもグローブを吊(つる)す決断をした。公務員になるはずの息子が殴られる姿を見せるのは、もうつらかった。

 約半年の試験勉強で5月の警察官採用試験に一発合格。やはり、ボクサーよりも適正があったことは周囲の誰もがうなずく。10月から10カ月、警察学校での訓練を終えれば、晴れて警察官だ。

 夢は2つ。「機動隊に入って、白バイ隊員」。「いつかリングに戻って来たい」。公務員の身でプロボクサーとなれば無報酬。激務の上、練習時間を確保するのも大変だろう。それでも香美の子は言う。「僕はボクサーだから」。1度は放棄した警察官の道に、かけがえのない回り道をして戻った。

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