【サッカー】なぜ?J1初挑戦で首位快走の町田 「すごく聞き入る」選手が明かした黒田監督の巧みな言葉選びとは 

 J1で首位を走る町田。クラブ初のJ1挑戦で、開幕から快進撃が続いている。その背景に全国高校選手権で青森山田高を3度の優勝に導いた黒田剛監督(53)が求める「相手が嫌がるサッカー」を全員が徹底できていることがある。選手たちが明かした、その理由とは。

 町田は昨オフ、元日本代表のDF昌子、GK谷、元韓国代表FW羅相浩など多くの補強を敢行。その数は17を数え、新加入選手9人がスタメンを占める試合もあった。新加入選手が多いと、それだけチームの戦術に適応させる時間を要することが想像できるものの、町田は開幕5戦で4連勝を記録するロケットスタートを切った。さまざまな監督の下でプレーしてきたベテランの昌子は黒田監督の良さについて、こう語る。

 「はっきり明確に言ってくれる方なので、選手としては分かりやすいですよね。『監督の求めるチームのサッカーってこうなんだ』っていうのをはっきり提示してくれたので、案外、新加入選手もスムーズにフィットするっていうチームの特徴があるのかもしれない」

 チームとして強固な意思統一が生まれることで、誰が出ても「町田のサッカー」を体現できるということだ。その表れに、リーグ戦で初先発に抜てきされた選手の活躍シーンが目立つ。4月21日のFC東京戦では、192センチの長身DF望月が決勝ゴールをアシストするなど攻守で躍動。さらに5月3日の柏戦ではFW荒木が1ゴール1アシストを記録しヒーローになった。

 なぜ黒田監督の指示は届きやすいのか。選手に聞くと、要因の一つに指揮官の巧みな言葉選びが浮かんできた。望月は「言語化能力がすごい。『絶対』『死にものぐるいで』とか、いろんな言葉を使いながら僕たちに分かりやすい適切な言葉を使ってくれる」。今オフ横浜FCから加入し、第12節まで全試合フル出場しているDF林は「言葉選びがすごく上手だなっていうのは本当に思っていて。ミーティングとかでも、すごく聞き入るというか、引き込まれるような感じがします」とうなずいた。

 具体的な場面として、ロングスロー練習の一幕がある。黒田監督が競り合う選手たちへ「おまえたちのテーマは何か分かるか?」と質問。「触ることです、フリックする(軌道をずらす)ことです」と答えた選手に指揮官は声のトーンを上げてこう返した。

 「違う。“何が何でも触ること”だ。ちょっとでも触れ。あとは五分五分のボールをみんなで拾いに飛び込むから」

 徹底させたいことは意識の根幹まで植え付けさせる。そのために、黒田監督は常に刺さる言葉を考え、選択しているという。「自分だったらこう言われたら本気になれる言葉。7割8割伝わっても、それは伝わったことにならない」。この考え方は青森山田高の教員だった時に染みついたものだといい「人間は必ず迷うこと、忘れることも出てくる。そこを先読みして伝えることも重要」と話した。

 黒田監督は取材の中で「優しい」「ずる賢い」など、よく選手の性格・特徴を口にする。相手の性格によって言葉選びを変えることで、良好なコミュニケーションが取れているのかもしれない。(デイリースポーツ・松田和城)

 ◆町田ゼルビア 1977年に町田市の小学生選抜によるFC町田トレーニングセンターが発足し、89年にトップチームが誕生。2009年から日本フットボールリーグ(JFL)に参戦し、12年に初めてJ2で戦う。18年にIT大手サイバーエージェントが経営権を取得し、19年にJ1の参加資格となるクラブライセンスが交付される。チーム名は町田市の木のケヤキ(ゼルコバ)と花のサルビアを合わせた造語。

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