【野球】昨年はわずか2人…減りつつある契約交渉の「保留」

 プロ野球選手の多くが契約を更改し、すでに来季に向けて動き出している。かつては、契約更改交渉後の記者会見は、大きなアップを手にして喜色満面の選手、球団提示額に納得がいかず不満をぶちまける選手と、明暗が分かれた。保留した選手の記事には「越年」「自費キャンプ」「調停」などの言葉が踊った。しかし今となっては、交渉でもめる選手はほとんどいない。ここ数年では、中日で、落合GM時代の14、15年にあったぐらいではないだろうか。

 つい5年ぐらい前は、多くの球団で保留する選手がいて、総数では10人以上だった。それが徐々に減っていき、15年オフは中日・平田、ソフトバンク・武田、日本ハム・陽岱鋼の3人だけ。そして16年シーズン終了後のオフ期間は、ここまでの交渉で保留したのはソフトバンク・飯田、福田の2人。他の選手は全て「一発更改」だった。

 一発更改が増えた理由はいくつかある。まずは複数年契約が一般的になったことだ。かつては全選手が単年契約だったのだが、FA制度が導入され、他球団に移籍した選手が複数年契約を結んだり、FA流出を防ぐために球団が複数年契約を持ちかけたりで、徐々に広まっていった。

 また代理人制度が導入されたことも要因の一つだ。代理人(弁護士)が交渉する場合、代理人が交渉の経過を明らかにすることはあり得ない。必然的に球団と代理人が交渉することすらオープンにされない(もちろん交渉後の記者会見もない)。契約がまとまってから選手が球団事務所に行って判を押し、記者会見する。そこまでに何度交渉を重ねていても、「一発更改」となる。

 次に下交渉の存在が挙げられる。球団と選手が水面下で交渉し、合意に至ってから選手が球団事務所を訪れてサインする。代理人交渉と同様、下交渉の存在はオープンにされない。選手が球団事務所に現れる初交渉の時点で合意に至っているのだから、絶対に一発更改となる。球団、選手とも、イメージダウンを避けられる。球団によっては、もう何年も「全選手が一発更改」を続けている。

 また、かつては「どんぶり勘定」と言われていた球団の査定方法も、かなり細密になっている。泣こうがわめこうが、球団の査定額は変わらないことが多く、長引かせてもいいことはないと選手が分かっている。

 もちろん、これまで書いたような交渉方法が適用されるのは、1軍で実績のある選手だけ。結果を残せなければ交渉の余地はなく、球団に雇ってもらうためには一発更改するしかない。

 いずれにしても契約交渉の「保留」は減っていくだろうし、いつかは死語になるかもしれない。(デイリースポーツ・足立行康)

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