【芸能】鳥越氏はなぜ完敗…随所に見えた安直さ、致命傷

 東京都知事選挙が7月31日に投開票され、元防衛相の小池百合子氏(64)が290万票を超える得票で圧勝した。一方、野党4党の統一候補として出馬したジャーナリストの鳥越俊太郎氏(76)は、130万票あまりに終わった。

 今回の都知事選は、前任者の舛添要一氏(67)の度重なる不正支出疑惑による辞任が発端。毎週の定例会見で釈明をするたびに“炎上”する様子が広く伝えられ、大きな話題となった。その意味では“舛添劇場”が前段にあった段階で、今回の都知事選は多分に「エンタメ要素」を含んでいたと言える。それに拍車をかけたのが、俳優・石田純一(62)の出馬騒動。そしてその終焉直後に、鳥越氏が急きょ、出馬を表明した。

 その知名度から、当初は最有力候補とも目されていた鳥越氏。だがフタを明けてみれば、得票数は小池氏の半数にも満たない完敗だった。鳥越氏は敗戦の弁として、一部週刊誌に過去の女性問題疑惑を報じられたことを大きな理由として挙げたが、出馬会見から選挙戦を取材した立場として、最大の要因と感じられるのは、あまりに「安直さ」が目立ったことだった。

 それは、まず出馬会見から表れていた。ライバルの政策は「知りません」、自身の政策は「これから考えます」と連発。記者内では、直前の参院選に出馬したタレント候補や、石田の名を挙げて「あまり変わらないんじゃないか?」との声も挙がったほど。結局。自身の公式サイトに政策集を掲載したのは、告示後という後手ぶりだった。

 選挙戦中にも、都政への知識不足を認めつつ「3日あれば大丈夫」と発言し、周囲を驚かせた。51年間のジャーナリスト人生で得た自信から出たものだったのだろうが、仮に本当に3日で十分な政策を練り上げる能力はあったとしても、その「3日」は選挙戦前に費やすのが、立候補者としての責務であり、礼儀ではないだろうか。

 実際に掲げた政策にも、安直さは見え隠れしていた。当初は自身の罹患経験をフルに生かす形で「がん検診100%」を最重要公約として掲げた。だが、五輪や待機児童、介護など大局的な課題が山積している都政においては、あまりに局地的な政策であることは否めず、中盤からは演説でもほとんど口にすることはなくなっていた。「非核都市宣言」など、インパクトを求めたかにも思える公約も並んだが、やはり都民にとって、喫緊の課題に対する答えにはなりにくいものだった。

 そして何よりも残念に感じた安直さが、演説での「ライバル攻撃」だ。鳥越氏に限ったことではないが、とにかく今回の選挙は、ライバルへのネガティブキャンペーン、もっと言えば単なる中傷合戦が目立った。とりわけ鳥越氏の陣営は、野党の連合。自民党政治に対する“口撃”は、苛烈を究めた。与党候補、ひいては安倍政権への批判は、多岐にわたって具体的だった。だが皮肉にも、具体的な批判を展開すればするほど、自身の政策の具体性の無さが浮き彫りになった感はぬぐえなかった。

 また、各党の応援弁士は、過去2代にわたって与党が推薦した都知事が不祥事で途中辞任していることを挙げ、出馬の資格はないと非難した。だが民進党や社民党がその前身時代に排出した首相の在任日数は、村山富市氏の561日が最長。2年以上務めた人物は1人もいないだけに、その非難にももう一つ説得力が感じられなかった。そもそも、政策的に明確な合意のない中で、選挙戦略のみでの野党統一候補という手法自体が、最大の「安直」だったのかもしれない。

 結局、鳥越氏の支持率は出馬会見時がピークで、その後は下がっていく一方だった。敗戦後の会見で、小池都政について「監視していきたい」と話した鳥越氏。それも大切なことだが、まずはジャーナリストとして、鳥越氏自身が敗因を、そして自身が展開した選挙戦をどのように感じたのかを、じっくり聞いてみたい。(デイリースポーツ・福島大輔)

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