【芸能】「重版出来」デイリー登場秘話

 女優の黒木華(26)が主演するTBS系ドラマ「重版出来(しゅったい)!」(火曜、後10・00)にデイリースポーツが“レギュラー出演中”だ。漫画雑誌「バイブス」編集部を中心に新人編集者のヒロインたちが奮闘する群像劇。俳優の松重豊(53)演じる編集長・和田が大の虎党で、愛読紙として登場する。

 阪神タイガースの記事を最優先に、2011年のサッカー女子W杯でなでしこジャパンが初優勝を遂げた翌日、MVPの澤穂希選手ではなく本紙だけ一面が「阪神3連勝!5割王手」だったのは語りぐさ。和田編集長は原作コミックでもデイリースポーツを読んでおり、この虎党設定は、原作者・松田奈緒子さんの夫が阪神ファンであることに由来する。

 とはいえ、デイリーが物語の鍵になるわけではなく、ドラマではオリジナルの新聞に変わっていてもおかしくはなかった。デイリーにこだわったのは映画「ビリギャル」などで知られるヒットメーカーでプロデューサーの那須田淳氏だったという。

 本物志向からくるもので、漫画を扱うドラマだから「漫画部分でウソをつきたくない」と劇中作品に藤子不二雄Aや河合克敏、ゆうきまさみら人気漫画家を起用したことも話題を呼んでいる。同じ思いから、デイリースポーツも和田編集長のキャラクター造形の重要なピースとして位置づけられた。

 松重も、西田敏行や渡辺謙のように本当の虎党俳優がいる中で自身が演じるプレッシャーを抱え、実際の阪神ファンからケチがつかないよう役作りを追究。幼少期から阪神ファンだった那須田氏とともにクランクイン前には異例の「阪神タイガース打ち合わせ」を開催したという。

 決して野球の熱狂的ファンとは言えない松重に対し、那須田氏が阪神について熱弁。那須田氏が幼少期に味わった85年の初優勝の喜び、暗黒期に子供ながらに学んだ「何事も万事がうまくいくわけではない」という教訓、そして現在にいたる経緯…。和田編集長が抱えているであろう、熱烈な阪神ファンであるがゆえの優勝への思いや、ある種のゆがんだ感情を伝え、象徴的なアイテムの1つとしてデイリーに託したという。

 那須田氏と松重の強い思いを受け取ったTBSドラマ制作局の嶋田広野氏は、適切な紙面探しに着手。本紙の東京本社でバックナンバーを読みあさり、2015年春から始まるドラマと同じ時系列かつ物語とリンクする見出しの1面を探した。

 例えば第2話。和田編集長が営業部と対決する回で、15年に阪神の指揮をとった同姓の和田豊前監督と「乱闘」の見出しが躍る紙面を使用。現実世界では金本知憲監督にバトンタッチしているため、ネット上では「なぜ和田?」と疑問の声も上がったが、実は計算されたチョイスだった。年越しした第6話からは金本監督の紙面が登場している。

 紙面はデイリースポーツだが、広告などの関係で実物ではなく、紙面データをTBSの美術部で加工している。前述の「和田 乱闘」は2015年5月25日付け紙面で終面は広島カープの記事だったが、ドラマでは阪神色を強めるため2面の記事を終面に持ってきている。

 記者が編集部のセットに黒木のインタビュー取材で訪れた際、松重がデイリーの記者が来たとわざわざ挨拶してくれた。松重は「もうしばらく、にわか阪神ファンをやらせてもらいます」とニヤリ。あくまで謙遜していたが、業界1位の漫画雑誌「エンペラー」打倒に燃え、熱意と人情味を同居させたキャラクターは、見事に阪神ファンのメンタリティーとシンクロしているように思う。

(デイリースポーツ 古宮正崇)

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