【野球】掛布マジックがもたらした変化

 正直、ここまで劇的に変化するとは思っていなかった。亜大時代のスイングを見た時、どのスカウトも「あのバッティングは苦労すると思う。修正できるか分からない」と口をそろえた。阪神がドラフト6位で指名した板山祐太郎外野手(21)=亜大。だが安芸2軍キャンプでルーキーの評価は日に日に高まっている。

 入団前、板山のスイングにはある欠点が指摘されていた。それはトップをつくり、スイング動作が始まる時にバットを持った両手が大きく上下動していた。球界では“ヒッチする”と言われ、特にパワーのある外国人選手に多く見受けられるクセだ。

 これではキレのあるストレートに差し込まれ、腕で反動をつけることによって低めの変化球にバットを止めづらくなる。近年では13年に入団したブルックス・コンラッド内野手がこのタイプ。結果を残せず1年限りで退団した。他球団スカウトも板山のクセに着目。ただ阪神は「欠点は大いに結構」という金本新監督の号令の下、高い身体能力を評価して6位で指名した。

 担当の中尾スカウトは「今のままではプロで打てない。とにかく腕の力を抜きなさい」と指名後に弱点を指摘した。本人も欠点を理解した上で、キャンプイン。その初日、掛布2軍監督が「足でタイミングを取ることだけを意識して」とティー打撃の際に伝えると、板山のスイングは劇的に変化した。

 自然とバットの上下動が無くなり、下半身主導でタイミングを取れるようになった。何よりも本人が「今までとはまったく違う打ち方をしてます」と明かすほど。実戦形式の打撃練習でも結果を残し、11日に行われた韓国・ハンファとの練習試合ではいきなり3安打。1軍への昇格候補に名前が挙がっている。

 「上下動のことは自主トレの時から見ていたよ。でもあれこれアドバイスするとね、本人が混乱しちゃうから。板山に言ったのは下半身の使い方だけ。そこが修正できれば、自然と上半身もいい使い方ができるようになるから」と掛布2軍監督は明かす。目に見える悪癖には直接、手を下さず、“遠因”に着目して修正して見せた。

 さらに「(ドラフト1位の)高山もそうだけど、大卒の選手は経験しているから吸収力、対応力がある。“山々コンビ”はなかなかいいよ」と絶賛する。板山自身も欠点を理解した上で、指導に耳を傾ける素直さ、貪欲さがあったからこそ変化は生まれた。

 長いプロ野球の歴史で運命的に語られる指導者と選手の出会い-。くしくも掛布2軍監督と板山は同じドラフト6位でプロの門をたたいた。これからどのような成長曲線を描いていくか。興味は尽きない。(デイリースポーツ・重松健三)

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