【野球】オリックス谷が残したものとは
オリックスの谷佳知外野手が、今季限りでユニホームを脱ぐことになった。復帰した古巣では2年間プレー。1軍ではわずか19試合の出場にとどまったが、チームに残したものは大きい。
長かった2軍生活では、自分より20歳ほども年下の若手に自ら話しかけ、打撃などについてアドバイスを与えた。
2年目の若月健矢捕手は「去年入団した時から教わったことは数知れない。まだ下っ端の僕に、熱心にバッティングなどいろいろと教えてくれた。野球に対する取り組み方もとても勉強になった」と振り返る。
誰よりも先にグラウンドに出て体をほぐし、練習に備える。「プレーでも常に全力疾走だし、谷さんがやっていたら、僕らもやらないわけにいかないですから」(若月)と、プロで生き抜くすべを背中で示した。
3年目の武田健吾外野手も「シーズン中もキャンプでも、自分のフォームなどについて『どこかおかしいですか』と聞いたら丁寧に教えてくれた。言葉の一つ一つに重みがあって、僕もどうにかして身になるように頑張った」と、大きな刺激を受けた。
盗塁王、最多安打、ベストナイン、ゴールデングラブ。数々のタイトルに加え、巨人時代に5度のリーグ優勝と2度の日本一。プロ生活19年で身につけた技術と経験を後輩に伝える作業にも、一切妥協はなかった。時には1時間以上にわたり、打撃論を語ることもあった。
若月は誓う。「10月3日が引退セレモニーなんですね。僕も今季は1軍の試合に出るチャンスをもらえたので、もう一度昇格して、3日に谷さんと一緒に京セラドームのグラウンドに立っていたい」。
「指導者は夢」と話す谷。残した足跡からは、新しい芽がどんどん育っている。
(デイリースポーツ・中野裕美子)