阪神支える藤浪のメディア側の評判とは

 好調阪神の原動力となっているのが3年目の藤浪晋太郎投手(21)だ。前回登板、28日のDeNA戦(甲子園)でチームトップの6勝目を挙げた右腕は、6月30日時点で両リーグ最多の103奪三振を記録。押しも押されもせぬ、伝統球団の大黒柱に成長している。日本ハム・大谷翔平と並ぶ「球界の至宝」であることはここで語るまでもないが、今回はそんな彼に対するメディア側の評判を取り上げてみる。

 大阪桐蔭時代に甲子園で春夏連覇を達成したこともあり、野球ファンでなくとも、その名前を聞いたことがある-という人は多いだろう。私は阪神タイガースの担当記者を長年やっているが、番記者の数では巨人をしのぐ人気球団で、若くして彼ほど真摯(しんし)に取材に応じる選手は希少だと感じている。

 ファンあってのプロ野球。メディアの向こう側にファンがいる…なんて言われかたもするのだが、選手だって生身の人間だ。気持ちが沈んでいるときもあれば、胸くそが悪いとき、報道陣と顔を合わすのも億劫(おっくう)…なんて日だってあるだろう。若ければなおさらだと思うが、それでも21歳は来る日も来る日も報道陣の前で足を止め、心を整えて口を開く。囲みの輪で話を聞く度、こちらが恐縮するほど丁寧に対応してくれるのだ。

 大げさに彼を持ち上げるつもりはないが、おそらく阪神のメディア関係者は、ほぼ全員が私と同じ感想を持っていると思う。そんな藤浪の“神対応”について、球団広報担当の見解を聞いてみた。

 「藤浪は負けた日でも必ず『(取材を)受けます』と言いますし、インタビューなどマスコミ各社の取材を彼本人が嫌だと言って断ったことは一度もありません。自分がきっちりと発信しないといけない立場だということを自覚していますし、それが使命だとも感じていると思いますよ」

 言葉も自然体で、大人ぶらず、自分を作ったり飾ったりすることもないので、取材する側の年齢を問わず、一様に好感を持たれる。

 関西メディアはときに阪神球団の大敵になる。低迷すれば論調は厳しくなるし、シーズン序盤でさえ、責任追求の矛先が首脳陣に向けられることなんてザラだ。選手がその標的になることもあるので、チーム全体がメディアへの警戒心を強めてしまうのはある意味仕方のないこと、とも言えるのだが…。

 前出の広報担当者は言う。

 「藤浪は、まだメディアからそれほど厳しく書かれたことがないと思うんですよ。ルーキーのシーズンからずっと結果を出しているので、批判される材料もないのですが、これから年数を重ねていって厳しいことを書かれたときにどう対応するのか。それは今の時点では分かりませんけど、彼は今でも『ダメなときはダメと書いてください』と記者の前で言っていますよね。ダメなときに厳しく書いてもらって、それを反発する力に変えようと思っているのではないでしょうか。じゃ次は結果を出してやろう、というね」

 星野仙一さんは阪神監督時代によく言っていた。「担当記者も戦力だ」と。02、03年の在任期間はキャンプや遠征中に記者と「お茶会」を開くなど、積極的にメディアとの懇親をはかっていた。報道する側を「外野」「敵」とみなさず、ときには人対人で向き合い、悩み相談に応じることもあったと聞く。新聞を通じて選手を鼓舞するなど、星野さん流のしたたかな計算もあったと思うが、そこに嫌みがないから賛同を得る。当時の番記者で星野監督を陰でののしる人間を見たことはなかったし、それどころか担当記者の中に援軍、つまり「星野信者」が数多くいたのも事実だ。

 信者…とまではいかないかもしれないが、藤浪の普段からの真摯(しんし)な対応が自然と周囲に援軍をつくり、彼の登板時にはネット裏の記者席から「ガンバレ!晋太郎」という空気が漂う。記者も人間だから、人柄に触れれば肩入れもしてしまう。勝って欲しい。彼のいい原稿を書きたい。担当記者にそう思わせる魅力、人間力が藤浪にはある。

(デイリースポーツ・吉田 風)

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